全 情 報

ID番号 07861
事件名 仮処分申立却下決定に対する抗告事件
いわゆる事件名 私立大学セクシャル・ハラスメント事件
争点
事案概要  Yが運営する大学の教授であるXが、Xが担当するゼミを履修していた学生からのXを加害者とする旨のセクシャル・ハラスメントの訴えを受けて同大学に設置されたセクシャル・ハラスメント調査委員会の調査に基づいて、Yの理事長から訓戒処分を受けるとともに、教授会から「教務上の措置」としてXの全演習科目について担当を停止するとの決定がなされたことに対して、演習の担当者としての地位にあることの確認を求めていた仮処分のケースで、原決定が、上記措置を教務上の措置として適法になされたものであるとしてXの申立てを却下したのに対して、原決定を取り消し、演習の担当者としての仮の地位を定める仮処分が認められた事例。
参照法条 男女雇用機会均等法21条
学校教育法58条
学校教育法59条
労働基準法89条9号
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント
懲戒・懲戒解雇 / 二重処分
裁判年月日 2001年4月26日
裁判所名 大阪高
裁判形式 決定
事件番号 平成13年 (ラ) 156 
裁判結果 一部認容、一部却下(確定)
出典 タイムズ1092号170頁
審級関係 一審/07854/神戸地/平13. 1.18/平成12年(ヨ)9016号
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-二重処分〕
〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント〕
 ウ 債権者は、訓戒処分後の債権者の言動から債権者のセクハラ行為再発のおそれがあり、また、債権者のセクハラ行為により学生の間に生じた動揺や反発から、教務上の緊急措置として本件措置をとる必要性があった旨主張する。
 しかしながら、債務者が主張するような債権者の訓戒処分後の言動をもってしても、債権者が訓戒処分の対象となった行為と同様の行為を再び行うおそれがあると認めるのは難しいというべきであるし、もし学生の間に債権者の担当する演習を受けたくないという者が出たのであれば、その者の移籍を認める方法で対処することも可能であったと考えられるのであり、本件措置後にXゼミの存続を望む学生の動きがあったことも合わせ考慮すれば、債務者が主張するような教務上の緊急措置として本件措置をとらなければならないような必要性があったとは考え難い。
 エ 以上のところに、本件措置の決定に至る経緯、その理由とされたところ及び本件措置の内容等を合わせ考慮すれば、債権者に対して本件措置をとるべき相当の根拠、理由の存在事態が疑われるものであって、本件措置は、実質的には訓戒処分の対象となった債権者の行為に対する再度の不利益処分と評価せざるを得ない面があり、一事不再理の原則に照らしても、許されないものというべきである。