ID番号 | : | 07890 |
事件名 | : | 退職金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 西日本成器・八翠園事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 車内や駅売店等への湯茶納入・販売を主たる業務とする株式会社Aに入社後、Aを中核とするBグループのY1社及びY2社の取締役として勤務していたXが、A社の取締役を退任するとともにA社を退職したが、Y1及びY2の従業員であったと主張して、Y1及びY2に対してA社の退職金規定の算定方法(Y1・Y2にはいずれも従業員の退職金規定がない)による退職金の支払を請求したケース。; 取締役の地位のほかに従業員の地位を有しているかは、取締役の職務内容、権限、職務の遂行に当たり代表取締役の指揮監督を受けているか否か、勤務状況、雇用保険等の社会保険加入の有無、取締役就任の際の事情等を総合的に考慮して判断すべきであるとしたうえで、〔1〕Xは現業の従業員を指導するとともに現業業務に従事したことは推認できるが、一方で代表取締役が日常の現業業務についてXを指揮ないし指導していたことはないなど、XにはY1及びY2の運営について広範な裁量権があったこと、又Y1・Y2を含むBグループの経営者の一員として総括的な業務を担当するように至っていたこと、〔2〕Xの受領していた報酬の支給内訳はいずれもY1・Y2の代表取締役の内訳と全く同一でありそのような取扱いを受けているのはXのみであり、Xの報酬からは雇用保険料の控除も行われていないなど、Xは、Y1・Y2社においては、その設立当初から取締役に就任してY1・Y2の業務に従事して、Y1・Y2の総責任者的立場にあったのであり、XとY1・Y2との間で、使用従属関係があったと認めることができず、Xは、Y1・Y2においては、業務の一部を分担する取締役として稼働していたというべきであるとして、XのY1・Y2に対する従業員としての退職金請求権はなく、又Y1・Y2においては、Xに対して取締役としての退職慰労金を支給しないことを株主総会において決議しているから、その名目が退職金であったとしても退職慰労金請求権もないとして、請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条 労働基準法3章 労働基準法89条3号の2 労働基準法9条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職慰労金 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 経営担当者 |
裁判年月日 | : | 2001年12月14日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 6397 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1794号19頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-経営担当者〕 会社の取締役が、会社の組織上役職を兼ねていたり、あるいは業務の執行に関与することはよくあることであるが、そうした場合であっても、当然に従業員の地位を有していると直ちに判断することはできず、取締役の地位の他に従業員の地位を有しているかは、当該取締役の職務内容、権限、職務の遂行に当たり代表取締役の指揮監督を受けているか否か、勤務状況、雇用保険等の社会保険加入の有無、取締役就任の際の事情等を総合的に考慮して判断すべきである。〔中略〕 〔賃金-退職金-退職慰労金〕 原告は、各被告においては、その設立当初から取締役に就任して各被告の業務に従事して、しかも各被告の総責任者的立場にあったのであり、このことに上記の諸事情を総合考慮すれば、原告と各被告らとの間で、使用従属関係があったと認めることはできず、原告は、各被告においては、業務の一部を分担する取締役として稼働していたというべきである。 3 したがって、各被告において、A社の退職金規定をそのまま準用して退職金を計算していたかどうかは明らかではないものの、少なくとも従業員に対して退職金を支給したことがあったことは前記認定事実のとおりであるが、原告は各被告の従業員の地位を有していなかったのであるから、原告は、各被告に対して、従業員としての退職金請求権は有しない。 また、各被告においては、原告に対して取締役としての退職慰労金を支給しないことを株主総会において決議しているから、その名目が退職金であったとしても退職慰労金請求権もない。 |