全 情 報

ID番号 07896
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 テレマート事件
争点
事案概要  健康食品、日用品等の通信販売を主たる業務とする株式会社Yに雇用され、三か月の試用期間経過後に正社員となり、客からの注文等の電話を受ける受電係に配属され、又在職中の一時期は、顧客からの買受商品についてクレームに対応したり、あるいは返品商品の管理等を行うクレーム係に配属され、受電係の業務と兼務していたXが、受電の際に作成するお客様メモが乱雑であり一見して判断できないものであったために、お客様メモを渡されたクレーム係の担当者がその記載内容を確認してもXから明瞭な回答がなく、それについての改善がみられないなどの状態であったところ、採用から一年もたたないうちに、勤務成績が良好ではなく、勤務態度もふまじめでしばしば社内の秩序を乱し業務に支障を来し、上司の再三再四にわたる業務態度改善命令に対してもその態度を改めなかったことを理由に解雇されたことから、Yに対し、本件解雇は理由がなく無効であると主張して、労働契約上の地位確認及び賃金の支払を請求したケースで、何度言っても上司の言ったことをきかないとのXの行為は、就業規則に定める解雇事由である就業状況が著しく不良で就業に適さない場合であるといえ、本件解雇には理由があるとして、Xの請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法89条3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 2001年12月21日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ワ) 1797 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1797号8頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 原告が作成したお客様メモ(書証略)は、客の氏名や電話番号は記載されており、必要事項の記載はあるものの、その記載は乱雑で、非常に読みにくく、作成者以外の第三者がその内容を正確に理解するには時間がかかり、少なくとも作成者である原告に対して、その記載内容について確認せざるを得ない内容である。そして、そもそも被告におけるお客様メモは、受電者の単なる覚書ではなく、客からのクレームについては、その内容を記載してこれをクレーム担当者に渡すものであって、作成者以外の者が読むことを当然の前提としているのであるから、その記載についても、少なくとも第三者が容易に判読できることが前提となると考えられる。しかも、被告は、通信販売を業として、電話を通じて顧客と接するのであるから、受電担当者の対応に不都合があればその後の業務に支障を来すことは容易に推認できるところでもある。そうすると、原告自身も、A取締役からメモの記載について注意を受けたこと及びBからメモの記載について文句を言われたことがある旨を供述している(原告本人尋問)が、他の受電担当者が作成したお客様メモ(書証略)と原告の作成したお客様メモを比較すると、原告が作成したお客様メモは問題があり、クレーム係が原告に対してその記載内容を確認せざるを得ないと認められ、クレーム係のBが原告に対してメモを適切に記載するように指摘すること及び被告から注意を受けることも十分理由があるといえる。それにもかかわらず、平成一二年八月の時点においても、原告はなお、(書証略)のようなお客様メモを作成していたことからすると、原告は、被告やクレーム係から何度もお客様メモについて注意を受けていたことについて、特段問題意識を有していなかったといわざるを得ない。〔中略〕
 以上のことからすれば、何度言っても上司の言ったことをきかないとの原告の行為は、被告就業規則に定める解雇事由である就業状況が著しく不良で就業に適さない場合であるといえるから、本件解雇は理由がある。