ID番号 | : | 07901 |
事件名 | : | 賃金仮払仮処分申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 大阪国際観光バス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 一般貸切旅客自動車事業を主たる業務とする株式会社Yで運転士あるいはバスガイドとして勤務し組合員であるXら二三名が、Yが経営危機を打開するために賃金についての協約有効期間は切れているとして就業規則を変更して賃金を最大三八パーセント、最小二六パーセント減額したことから、賃金を不当に減額されたと主張して労使協定に基づき計算した賃金と実際に支給された賃金との差額の仮払を申し立てたケースで、労働協約が失効した以上、協約上の規定自体が効力を持続することはあり得ないが、協約失効後の労働契約における当事者の合理的意思は協約上の労働条件を存続せしめることにあると解すべきであり、これと異なる新たな合意が成立しない限り、従前の労働条件が通用するというべきであるとしたうえで、本件において、組合とYがこれまで毎年賃金額について団交を通じてこれを協定してきたことは争いがないところ、組合とYのこれまでの労使協定は、いずれも一年の有効期間が設けられていたということはできず、Yと組合で賃金等について定めた運転士確認書及びガイド確認書(本件労働協約)も、新就業規則による賃金支払時点において、その効力を有していたことが認められるから、本件では余後効についての問題は生じず、また旧給与規定にはYの事情によって一方的に賃金や手当を減額できるとの規定もないほか、就業規則の改定による新給与規程に基づく本件減額措置は、その必要性も認めることができないうえ内容及び従業員への不利益の程度において合理的なものであると認めることはできないとした結果、本件減額措置は有効とはいえず、更に保全の必要性も認められるとして、Xらの申立てが認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条2号 労働基準法93条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与 |
裁判年月日 | : | 2001年12月26日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成13年 (ヨ) 10083 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労経速報1797号13頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額〕 債務者は、倒産状態にある経営危機下では、必要性があれば、一方的に賃金を減額することも許される旨を縷々主張するが、使用者と労働者個人との契約関係は、債務者が倒産状態にあるといった経営危機があるとしても、その内容を相手方の同意なしに一方的に変更することができるとする根拠はない。〔中略〕 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-賃金・賞与〕 債務者は、本件減額措置を就業規則の改定による新給与規定に基づいて実施しているが、(書証略)によれば、債務者において、平成七年から平成一三年にかけて売上高が減少していることは認められるものの、一方(書証略)を併せても、就業規則の変更による本件賃金減額措置の必要性を認めることはできないし、他に本件減額措置の必要性を認めるに足りる疎明はない。また、後記二、2記載のとおり、本件減額措置による賃金の減額率は大きく、本件賃金減額措置に関する新給与規定は、その内容及び従業員への不利益の程度において、合理的なものであると認めることもできない。他に本件減額措置に合理的理由があると認めるに足りる疎明はない。 |