ID番号 | : | 07908 |
事件名 | : | 退職金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 双美交通事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 一般乗用旅客自動車運送事業などを業とする株式会社Yの経理担当の従業員として入社し、その後取締役に就任したXが、その在任中に従業員を兼務していたとして、Yに対し、〔1〕従業員としての退職金、〔2〕取締役としての退職慰労金(主位的請求)又は退職慰労金相当額の損害賠償金の支払(予備的請求)を請求したケースで、Xは入社後、主に経理を担当し、取締役就任後も、業務内容に大きな変化はなく、引き続き経理業務に従事し(常務取締役、専務取締役に昇格した後も同様)し、会社の経営に深く関与していたとしても社長や会長の決裁を受けたうえで行っていたのであるから、このような重要な業務に従事していたことが指揮監督関係の存在を否定する根拠とはならず、また常務取締役就任後は、勤怠管理を受けなくなったが、ほとんど毎日会社に出勤し一般従業員と同様に仕事を従事し、更に報酬も役員報酬と給料が明確に区別され、Xは雇用保険や中小企業退職金共済にも加入していたことなどの事実によれば、Xは取締役就任後、退任するまでの間も、雇用契約に基づく従業員と地位を保有していたと認められるとして、就業規則に基づき計算した従業員退職金の額についてXの請求が認容されたが、退職慰労金については、取締役を退任したXに対し退職慰労金を支給する旨のYの株主総会決議が存在せず、Xの退職慰労金請求権は発生していないなどとして請求が棄却された(予備的請求も棄却)事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法3章 労働基準法11条 労働基準法89条3号の2 労働基準法9条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職慰労金 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 経営担当者 |
裁判年月日 | : | 2002年2月12日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 4116 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労経速報1796号19頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-経営担当者〕 原告は、入社後、主に経理を担当していたが、取締役に就任した後も、業務内容に大きな変化はなく、引き続き経理業務に従事しており、これは、常務取締役となり、さらに専務取締役に昇格した後も同様であった。原告は、定型的な経理業務の他に、資金繰りについての企画・立案をしたり、融資について金融機関との間で折衝を行うなど、被告の経営に深く関与していたが、社長や会長の決裁を受けたうえでこれらの業務を行っていたのであるから、このような重要な業務に従事していたことが指揮監督関係の存在を否定する根拠とはならない。原告は、常務取締役になった後は、勤怠の管理を受けなくなったが、ほとんど毎日会社に出社し、一般の従業員と同様に仕事をしていた。被告から原告に支払われる報酬は、一貫して役員報酬と給料が明確に区別されており、原告は、雇用保険や中小企業退職金共済にも加入していた。 これらの事実によれば、原告は、取締役に就任した後、退任するまでの間も、雇用契約に基づく従業員の地位を保有していたと認められる。〔中略〕 〔賃金-退職金-退職慰労金〕 退任した取締役に対する退職慰労金は、商法二六九条の報酬であり、定款に定めのない場合、株主総会の決議をもって取締役に対する支給額を決定して、初めて支給が可能となるから、株主総会決議は、退職慰労金請求権の発生要件となる。 ところが、取締役を退任した原告に対し退職慰労金を支給する旨の被告の株主総会決議が存在しないことは、当事者間に争いがないから、原告の退職慰労金請求権は発生していないというほかない。 |