全 情 報

ID番号 07928
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 リンカーンモータース事件
争点
事案概要  自動車の販売を業とする株式会社Yの営業所で事務に従事してきたXが、当該営業所サービス部を閉鎖するにあたりXが本社への転勤命令を拒否したとの理由で解雇されたことから、本社への転勤拒否という事実はなく、本件解雇は解雇権の濫用に当たり無効であるなどと主張して、労働契約上の地位確認及び賃金の支払を請求したケースで、本件解雇は、〔1〕本件営業所サービス部門の閉鎖にともない、同部に配置されていた人員が不要となったためであり、〔2〕Yは、解雇を選択する前にXに対し、同部の他の従業員三名と同様に本社での勤務の機会を提供したこと、〔3〕Xが本社勤務を拒絶したため、Xに提供できる業務がなくなり、Yはやむを得ず予告期間を置いたうえで、Xを解雇したことに照らすと、本件解雇にはやむを得ない事由があるというべきであり、権利の濫用であるとはいえないとしてXの請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法89条3号
労働基準法2章
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反
裁判年月日 2002年3月8日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ワ) 17192 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労経速報1803号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕
 前記認定事実によれば、〔1〕被告が原告を解雇したのは、松戸営業所サービス部の閉鎖に伴い、平成一一年一一月二一日以降サービス部に配置されていた人員が不要となったためであること、〔2〕被告は解雇を選択する前に、原告に対し、サービス部の他の従業員三名と同様に本社での勤務の機会を提供したこと、〔3〕原告が本社勤務を拒絶したため、結局原告に提供できる業務がなくなり、被告はやむを得ず予告期間を置いた上で原告を解雇したこと、以上の事情が認められ、この事実関係に照らすと、本件解雇にはやむを得ない事由があるというべきであって、権利の濫用であるとはいえない。
 原告は、本社への転勤を拒否した事実はないと主張するが、A常務に対し、自動車で通勤する場合のガソリン代、高速道路利用料金及び駐車場利用料金を被告が負担してくれないのであれば転勤には応じられないとの意思を表明したことは前認定のとおりであり、また、原告が解雇予告通知を受けた後、被告に対し転勤意思があることを表明したことは証拠上全く窺われず、むしろ前記のとおり退職を前提とする行動を取っていることからすると、原告は、被告が内示した転勤を予め拒否したと考えるほかはない。