ID番号 | : | 07932 |
事件名 | : | 従業員の地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 塚本庄太郎商店事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 大阪市中央卸売市場内にある青果物仲買等を目的とする株式会社Y(個人商店から法人化・取締役を創業者一族で占める小規模閉鎖会社)では、九名の正社員、三名のパートタイマーのほか、アルバイトが勤務していたが、不況による人件費削減を理由に三名の自主退職者を募集後、自主退職者がいないときには三名を指名解雇する旨が労働組合に告知され、その後団体交渉が四回開催されたが、希望退職者の応募が期限を過ぎても出なかったため、労働組合の執行委員長X1及び副執行委員長X2の二名及び非組合員一名が、就業規則(やむを得ない事業上の都合によるとき)に基づき解雇されたことから、XらがYに対し、〔1〕右整理解雇は無効であると主張して、労働契約上の地位確認及び賃金の支払、並びに〔2〕同解雇は不当労働行為であるとして不法行為による損害賠償の支払を請求したケースで、〔1〕については、本件整理解雇につき、人員削減の必要性があったかについて疑念があるとし、また経費削減の状況等からすれば誠実に解雇回避努力を行ったとはいえず、また人選の合理性があったともいえず、組合に対して十分な説明がなかったことを総合考慮すれば、本件解雇は合理的理由がなく、また社会通念上相当性を欠くもので解雇権の濫用として無効であるとし、地位確認請求と賃金支払請求が一部認容され、〔2〕については、本件解雇は不当労働行為に該当しないとして請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条3号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 2002年3月20日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成13年 (ワ) 6317 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例829号79頁/労経速報1813号15頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇権の濫用〕 確かに、解雇については、民法上にその制約はなく、労働基準法等で一定の場合についてのみ、その行使が制限されているにすぎない。しかしながら、解雇が使用者の権利の行使であるとしても、その行使について客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当性がないと判断される場合には、権利の濫用であって、その解雇は無効といわなければならない。 本件解雇は、被告の経営上の理由から人件費削減を目的として行われたものであり、いわゆる整理解雇といわれるものであるが、かかる解雇についても、これが客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当性を有しない場合には、権利濫用として無効になるというべきである。そして、その有効性を判断するためには、使用者における人員削減の必要性の有無、程度、その解雇回避の努力の有無、程度、被解雇者の人選の合理性の有無、解雇手続における労働者への説明の程度等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきものである。被告が零細企業であるという事情は、上記のような考慮要素を判断する中で検討されるべき事情であって、単に零細企業ということだけで、全く自由に解雇をなしうるとすることは相当ではない。〔中略〕 〔解雇-整理解雇-整理解雇の必要性〕 〔解雇-解雇権の濫用〕 被告において人員整理の必要性があったかについて疑念があり、また希望退職の募集を行ってはいるものの、経費削減の状況等からすれば誠実に解雇回避努力を行ったともいえず、さらに原告らに対する人選の合理性があったともいえず、被告が組合に対し十分な説明を行っていなかったことを総合考慮すれば、本件解雇については、合理的な理由がなく、また社会通念上相当性を欠くものであり、解雇権の濫用として無効であると言わざるを得ない。 |