ID番号 | : | 07966 |
事件名 | : | 雇用関係存続確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | テレビ朝日サービス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | テレビ会社の関連会社として放送機材の販売・リース等のほか各種業務を行う株式会社Yの保険部に配属されたXが、勤務成績不良(ミスを頻繁に発生させ顧客から苦情を受け、上司の注意にもかかわらずミスを改善する態度を示すことなく同様のミスを繰り返したり、重要な会議を正当な理由なく欠席するなどしていた)で今後改善の見込みがないことが解雇事由に該当し、また職場外の傷害事件(刃物を使用して初対面の人物に傷害を追わせる事件)を引き起こしYの信用を著しく失墜させるものであることなどが懲戒解雇事由に該当するとして、普通解雇されたことから(Xが依願退職を申し出れば依願退職扱いとするとしていたがXはこれを聞き入れなかった)、Yに対し本件解雇は解雇事由がないのに行われたものであり無効であると主張して労働契約上の地位確認及び賃金の支払を請求したケース。; Xは本件解雇当時、指導や助言によって勤務状況の改善を期待するのは困難な状況にあり、Yの保険部の社員として必要とされる能力を備えておらず、勤務成績が著しく不良であり、また従業員として会社の規律や上司の命令に従って業務を遂行しようとする意思を著しく欠いて勤務態度が著しく不良であり、またささいなことから興奮して同僚や上司等の人格を著しく傷つける言動を頻繁に行うなど、Yの業務の円滑な遂行の支障になる程度にまで同僚と協調して業務を遂行する意思や自制心を著しく欠き、その改善が見込まれないなかで、Xは傷害事件を起こし、その後も自らの行為を何ら反省していなかったのであるから、Xはいずれも就業規則所定の解雇及び懲戒解雇事由に該当し、本件解雇が著しく不合理であり社会通念上相当な範囲を逸脱したものとは認められず有効であるとして、Xの請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 解雇(民事) / 解雇事由 / 暴力・暴行・暴言 |
裁判年月日 | : | 2002年5月14日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (ワ) 24376 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1819号7頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 前記1の認定事実によれば、原告は、被告の保険部に配属されて以来、長期間にわたり、様々な業務を担当したが、入社当初に割り当てられた基本的な業務であるファイリングや海外旅行保険の業務を適切に行うことができず、また、徐々に各種損害保険に関する業務を割り当てられたものの、保険契約申込書の作成において記入もれや記入ミスを頻繁に発生させたり、契約更新時に重要事項に関する確認を怠ったり、顧客への連絡を怠り満期日を経過させるなどの初歩的なミスを繰り返し、そのため、顧客から苦情を受けることもあった。原告の上司は、原告の勤務状況の改善を期待し、社員を育成する観点から、再三にわたり、原告に対し、指導・注意をしたが、原告は、注意を聞き入れたり、ミスを反省する態度を示すことなく、同様のミスを繰り返した。原告は、入社後普通資格を取得したが、上司から上級資格の取得のための講習会を受講するよう指示されてもこれを拒否し続けるなど、業務知識の向上に努めようとせず、そのため、原告は、入社後長期間が経過しても依然として初歩的な業務しか担当することができず、このような業務においても、業務知識や注意力の不足に起因すると思われるミスが解消しなかった。原告は、本件解雇当時、指導や助言によって勤務状況の改善を期待するのは困難な状況にあり、被告の保険部の社員として必要とされる能力を備えておらず、勤務成績が著しく不良であった。 また、原告は、上司からの再三にわたる業務命令を無視して、二年余りの長期間にわたり、重要な会議である定例部会を正当な理由なく欠席し、定例部会での決定事項を遂行するよう指示されても、正当な理由なくこれを行わなかった。そして、原告は、正社員になったころからほとんど毎日、就業時間のほとんどを離席して外出し、外出中に会社に何らの連絡をせず、終業時刻まぎわに帰社しており、具体的な業務内容を上司に報告したことはほとんどなく、上司から外出中に連絡を入れるよう指示されてもこれに従わなかった。これらによれば、原告は、従業員として会社の規律や上司の命令に従って業務を遂行しようとする意思を著しく欠いており、勤務態度が著しく不良であった。〔中略〕 〔解雇-解雇事由-暴力・暴行・暴言〕 原告の勤務状況や勤務態度の改善が見込まれない中で、原告は、刃物を使用して初対面の人物に傷害を負わせる事件を引き起こしており、その後も自らの行為を何ら反省せず、一方的に事件に巻き込まれたなどと事実に反する主張をした。このような中で原告の雇用を継続すると、職場内の他の社員に大きな不安と動揺を与え、被告の円滑な業務の遂行に著しい支障が生じるのは明らかである。〔中略〕 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 〔解雇-解雇事由-暴力・暴行・暴言〕 前記1の認定事実及び2(1)で述べたところに照らすと、本件解雇は、被告の主張するその余の解雇事由について判断するまでもなく、著しく不合理であり社会通念上相当な範囲を逸脱したものとは認められず、有効である。原告は、本件解雇は原告が傷害事件に巻き込まれたのを奇貨として、被告から排除するために行われたものであると主張するが、前記1で認定した原告の勤務状況、傷害事件や本件解雇に至る経緯からすると、原告の主張は採用することができない。 |