ID番号 | : | 07969 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 岡山セクハラ(労働者派遣会社)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 一般労働者派遣事業等を業とする株式会社Y3社の支店長であった女性社員X1は、Y3社の専務取締役営業部長であったY1から、上司としての立場を利用して異性関係を問いただされたり、ほかの社員のいないところで、後継者の地位をちらつかせつつ、肉体関係をもつように求められたり、その後も接吻を迫るなどされており、更にX1がY1の行為について相談をしていたX2も、Y1からX1と肉体的関係をもてるよう協力するよう要請されたことから、X1・X2はこれを拒否するとともに、他の従業員も含めて数名で、代表取締役Y2(Y2もX1・X2に再婚しないのか、子供はまだか等の発言を行っていた者である)に対し、Y1の行為を訴えたところ、役員会議が開かれ事情聴取が行われたもののY1のセクハラ行為は確認できないとされ、結局、X1及びX2、Y1に対して降格・減給(三割減)の処分が決定され、それに基づきX1及びX2は支店長職を解任されて一般社員に降格となり月給も大幅に減額(X1:七〇万、X2:八〇万の三割減)されたうえ、この処分の後、Y1は、X1・X2の風評を流すようになったうえ、X1・X2は翌月更に賃金が半分以下に減額され、その後は事実上仕事を取り上げられ、給与も入金されなくなったことから(X1・X2は退職した)、Y1のセクハラ行為、Y2の男女差別的発言等が不法行為に当たると主張し、民法七〇九条に基づきY3及びY2に対して慰謝料等の請求を、Y3社に対し、民法七〇九条、七一五条に基づき損害賠償(慰謝料(Y1・Y2と連帯)のほか退職後一年分の逸失利益)の支払を請求したケース。; Y2の行為は不快に感じる行為であっても違法性を有さず不法行為は成立しないが、Y1の行為は不法行為が成立し、Y3社は上記の行為について使用者責任を負い、また当該減給・降格処分は違法なものであるうえ、X1・X2が職場に復帰することができなくなるまでに職場環境が悪化することを放置する等のY3の行為は、全体として一個の不法行為を構成するとして、X1・X2の請求が一部認容された事例(Y3社に対する請求について約一五〇〇万、Y1についてはX1に対し約二二〇万、X2に対し約三三万円)。 |
参照法条 | : | 民法709条 男女雇用機会均等法21条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント |
裁判年月日 | : | 2002年5月15日 |
裁判所名 | : | 岡山地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成11年 (ワ) 1052 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例832号54頁/第一法規A |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 小宮文人・労働法律旬報1546号56~59頁2003年2月25日 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント〕 前記1のとおり、被告Y1は、原告X1が平成11年3月14日に高知へ男性と行ったことや、東京出張の際にAと会っていることなどから、原告が自分以外の男性と付き合っているのではないかと考え、上司としての立場を利用して、原告X1に対し、原告X1の異性関係を問いただしたり、Aに対して電話をする等の行動に出、さらには、同月18日に、高松支店から岡山本社に帰った後、原告X1に電話をして呼び出し、他の社員のいない所で、後継者の地位をちらつかせつつ、原告X1に対して被告Y1と肉体関係を持つよう求めたものである。その上、原告X1が同月27日、被告Y1に対し、同人が18日にとった言動の理由を尋ねると、これを謝罪するどころか、原告X1は独身であるから性的欲求が解消されていないと思ったなどと答え、もう感情を表に出さないから最後にキスをさせてくれと言って原告X1に対して接吻を迫った。そして、原告X1が被告Y1を拒否し、原告X1らがY3株式会社や被告Y2に対して、被告Y1のセクハラ行為を訴えるや、自己の保身のために、セクハラ行為を否定し、他の社員に対し、原告X1らは淫乱である等と繰り返し述べて原告らと他の社員との関係を壊し、原告X1の職場復帰を不可能にした。 これら被告Y1の行為は、上司としての立場を利用して原告X1と肉体関係を持つためになされたものであり、原告X1がこれを拒否し、Y3株式会社や被告Y2に対してセクハラ行為を訴えるや、上司としての立場を利用して原告X1の風評を流し、職場環境を悪化させ、原告X1の職場復帰を不可能ならしめたのであるから、不法行為に当たる。〔中略〕 前記1のとおり、被告Y1は、原告X1と肉体関係を持つために、同人と親しい原告X2に対して、上司としての立場を利用し、平成11年3月18日に、車で迎えに来るように命じた上で、車の中で原告X1と肉体関係を持てるように協力するよう要請し、その後、原告X2がこれに加担することを拒否し、Y3株式会社や被告Y2に対してセクハラ行為を訴えるや、上司としての立場を利用して原告X2の風評を流し、職場環境を悪化させ、原告X2の職場復帰を不可能ならしめたのであるから、不法行為に当たる。〔中略〕 被告Y1の上記行為は、被告会社の内部で、被告会社の専務取締役としての立場を利用してなされたものであり、被告Y2の上記行為は、被告会社で生じたセクハラ問題についての事情聴取中になされたものであるから業務の執行についてなされたものであることが明白であり、被告会社はこれらの行為について使用者責任を負う。〔中略〕 ア 被告Y1の不法行為による慰謝料 原告X1は、被告Y1から後継者の地位をちらつかされ、肉体関係を迫られ、これを拒否するや仕事を取り上げられ、虚偽の性的内容の風評を流布され、平成7年から行っていた被告会社での仕事をあきらめ、退職せざるを得ない状況に追い込まれたものであり、これにより原告X1が受けた精神的苦痛を慰謝するには200万円をもって相当とする。 原告X2は、被告Y1から、原告X1を抱くための協力を依頼され、性的対象とならなければ被告会社での出世は望めないとの絶望感を持たされた上、被告Y1の協力を拒否するや仕事を取り上げられ、虚偽の性的内容の風評を流布され、平成8年から行っていた被告会社での仕事をあきらめ、退職せざるを得ない状況に追い込まれたものであり、これにより原告X2が受けた精神的苦痛を慰謝するには30万円をもって相当とする。 イ 被告会社の固有の不法行為による慰謝料 前記1認定の事実等本件に顕れた一切の事情を考慮すると、原告X1及び同X2について各50万円とするのが相当である。 |