ID番号 | : | 08008 |
事件名 | : | 不当利得返還請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三光純薬事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 株式会社Yで勤務し平成一四年六月九日に定年退職したXが、Yの給与規定では賞与は会社の業績その他に応じ、本人の勤務成績を考慮して支給すると規定し、当該計算期間(前年一〇月一日により当年三月末まで)中勤務し、支給日に在籍する従業員に支給する旨が規定され、また従前の労働慣行に従って平成一四年五月三〇日にYと労働組合との間で締結された協定書にも、賞与の支給対象者は三月三一日現在在籍し、支給日当日(平成一四年六月二〇日)に在籍するものとされていたところ、Xは支給日在籍要件を充たしていなかったため、賞与の支給がなされなかったことから、Yに対し、その支払を請求したケースで、Yの給与規定の考え方によれば、支給の有無や支給するとした場合の支給額は、その都度決定される性質のものであることが認められるのであり、その意味では、雇用契約から当然に支払われるべき権利が発生する給与債権とは、著しく性質を異にするものであるというべきであるから、賞与の計算期間にXが在籍したからといって直ちに賞与請求権が発生するものとはいえず、そして、支給日在籍要件は、賞与の受給資格を明確な基準で確定する必要から定めたものと認められ、合理性があり、これらが給与規定に明記されていることから、退職者に不測の損害を与えられるとも認められず、支給日に在籍しない定年退職者に賞与が支給されなかったとしても不合理な差別をしているとは解釈できないとして、請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条 労働基準法3章 労働基準法89条2号 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賞与・ボーナス・一時金 / 支給日在籍制度 |
裁判年月日 | : | 2002年9月9日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成14年 (ワ) 13469 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1821号12頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賞与・ボーナス・一時金-支給日在籍制度〕 被告の現行の給与規程は、賞与について、賞与は会社の業績その他に応じ、本人の勤務成績を考慮して支給すると規定し、証拠(略)によれば、原告入社当時の給与規則では、会社が利益があったときは月額給与の他に賞与を支給することがある、賞与は原則として、そのときの会社並びに社会情勢を考慮して予算を決め発表すると規定している。以上のとおり、被告の給与規程の考え方によれば、賞与は、会社の業績と各従業員の勤務成績とを考慮して、支給するかどうか、支給するとしてその支給額をいくらにするかは、その都度決定される性質のものであることが認められるのであり、その意味では、雇用契約から当然に支払われるべき権利が発生する給与債権とは、著しく性質を異にするものであるというべきであるから、賞与の計算期間に原告が被告に在籍したからといって直ちに賞与支払請求権が発生するものとはいえないと解すべきである。そして、支給日在籍要件は、賞与の受給資格者を明確な基準で確定する必要から定めたものと認められ、合理性があるというべきである。そして、賞与の法的な性質が給与とは異なること、支給日在籍要件が就業規則である給与規程に明記されていることから、退職者に不測の損害を与えるものとも認められない。 以上の検討によれば、退職者に対しては一律に、賞与の支給について支給日在籍要件が適用されるという解釈は、合理性があり、定年退職者についても他の退職者と等しく、賞与支給の計算期間に在籍しながら支給日に在籍しなかったことから支給されないとしても、不合理な差別をしていると解釈することはできないから、原告の主張(1)は理由がないことになる。 |