ID番号 | : | 08033 |
事件名 | : | 慰謝料請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 甘木市社会福祉協議会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 社会福祉法人Y1の職員であるXが、Y2市から同Y1に事務局長として派遣されたY3から〔1〕職務上の嫌がらせ、〔2〕身体接触、〔3〕自宅における性交の要求等のセクシュアル・ハラスメントを受けたとして、Y1、Y2、Y3に損害賠償を求めたケースの控訴審で、セクシュアル・ハラスメントと認めなかった原審に対して、〔1〕は認められないが、〔2〕および〔3〕の一部は認められるとした事例。 |
参照法条 | : | 男女雇用機会均等法21条 民法709条 民法715条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント |
裁判年月日 | : | 2000年1月28日 |
裁判所名 | : | 福岡高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (ネ) 273 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(上告、上告受理申立) |
出典 | : | タイムズ1089号217頁 |
審級関係 | : | 一審/福岡地/平10. 3. 3/平成8年(ワ)2843号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント〕 被控訴人Y3の前記請求原因2(六)、(八)及び(九)の行為は、いずれも職務上の上司にある立場を利用して控訴人の意に反する性的行為を行ったものであり、控訴人の人格権、性的自由を侵害したものであって、不法行為が成立するというべきである。〔中略〕 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント〕 被控訴人社協は、被控訴人Y3は被控訴人市から派遣されたものであり、同人の選任、監督上の責任はないから、民法七一五条一項ただし書により使用者責任を免れると主張するが、被控訴人社協は被控訴人市と職員派遣についての協定書(乙ロ二)を締結し、これに基づいて被控訴人Y3の派遣を受け入れたものであり、受入れ後は同人の使用者の立場にあったのであるから、被控訴人Y3が派遣職員であるからといって選任監督についての責任を免れるものではない。なお、被控訴人社協が被控訴人Y3の選任監督につき相当の注意をなしたことを認めるに足りる証拠もない。〔中略〕 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント〕 被控訴人Y3の前記各行為が被控訴人社協の「事業の執行に付き」行われたものかどうかについて検討するに、六月一日の行為(請求原因2(八))は、控訴人と被控訴人Y3が、休日(土曜日)に社協事務所におけるパソコン業者の作業の立会のために登庁し、立会事務が終了した後控訴人が同事務所で自己の仕事をしていたところ、被控訴人Y3が同事務所の会長室に部下である控訴人を呼んで性的行為を行ったものであり、時間外勤務命令が出されていなかったとはいえ、被控訴人社協の事務とみるべき立会業務と時間的に接着し、職場内で行われたものであるから、外形上その職務の範囲内の行為と認められ、「事業の執行に付き」行われたものということができる。また、六月一二日の行為(請求原因2(九))は、被控訴人Y3が、勤務時間が終了した後も引き続き仕事をしていた部下の控訴人を社協事務所の応接室に呼び出して性的行為を行ったものであり、職場内で勤務時間に接着して行われたものであるから、外形上その職務の範囲内の行為と認められ、「事業の執行に付き」行われたものということができる。〔中略〕 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント〕 控訴人は二五歳のころ(昭和五三年ころ)結婚したが、一〇年ほどして離婚し、子供はなかったので一人住まいをしていたこと、平成六年夏ころの一時期被控訴人Y3と親密な男女関係にあったが控訴人の意向によりその関係は絶ったこと、平成八年三月下旬ころ、同年四月一日の異動により控訴人の方から親密な男女関係を絶った被控訴人Y3が被控訴人社協の事務局長に派遣されることを知って不安感を抱いていたところ、同人は着任早々に控訴人が担当していた経理事務等の見直しに着手したことなどから控訴人は職場において強いストレスを感じ、四月八日以降神経性胃炎で通院して投薬を受けるようになったこと、また、同年五月ころから、被控訴人社協の理事会において、控訴人の採用手続や被控訴人社協職員の欧州視察等の経理関係が問題とされるに至り、職場においては、場合によっては被控訴人社協が解散になるかも知れないとの話しが出るなどし、控訴人はこれらの問題に関して弁護士に相談に訪れるなどストレスがかなり増大していたことが窺われること、このような問題がある中、控訴人は被控訴人Y3から前記性的行為を受け、これがストレス増大の一因となったこと、同年七月二五日A大学病院においてうつ状態と診断されたこと、控訴人は平成九年四月一日からホームヘルパーに職務を変更されたこと、などの各事実が認められ、その他本件に顕れた諸般の事情を考慮すると、被控訴人Y3の性的行為が控訴人に与えた精神的苦痛に対する慰謝料としては一五〇万円が相当である。 |