ID番号 | : | 08053 |
事件名 | : | 損害賠償等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三井鉱山強制連行損害賠償請求事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 太平洋戦争中にエネルギー資源確保のための労働力として日本に強制連行された中国人被害者であるXらが、Y2の経営する鉱業所で強制労働をさせられた旨の主張をし、それによって精神的苦痛を受けたとしてY2に損害賠償の請求をすると同時に、Y1(国)もY2に対して公権力を行使することを介して事実上の炭坑労働の強制したものであるとしてY1及びY2に対して民法709条、715条、719条により謝罪広告の掲載及び慰謝料の支払を求めたケースにおいて、本件強制連行及び強制労働は、Yらが共同して計画・実行したものであり、Xらに対する強制連行及び強制労働の事情を考慮すると、正義・衡平の理念により除斥期間に関する民法の規定の適用は制限され、Y2は不法行為責任を負うが、Y1については、いわゆる国家無答責の法理が基本的法制度として確立していた当時の法体系の下において不法行為責任が発生すると解することはできないとして、Y2に対する損害賠償請求のみを一部認容した事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 民法715条 民法719条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 2002年4月26日 |
裁判所名 | : | 福岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 1550 平成13年 (ワ) 1690 平成13年 (ワ) 3862 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 時報1809号111頁/タイムズ1098号267頁/訟務月報50巻2号363頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 松岡肇・月刊社会民主569号48~51頁2002年10月/松岡肇・法と民主主義368号58~59頁2002年5月/長谷川俊明・国際商事法務30巻11号1611頁2002年11月 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 前記のとおり、日本政府は、石炭連合会を含む日本の産業界からの強い要請を受け、重筋労働部門の労働力不足に対応するため、これらの産業界と協議して、昭和一七年閣議決定により、国策として中国人労働者の日本国内への移入を決定し、これを実行に移したこと、中国人労働者を日本国内に移入するに当たっては、行政供出その他三つの供出方法を採用し、昭和一九年次官会議決定によって、中国人労働者の素質、一定期間の訓練、日本への輸送の方法、契約期間、日本での使用条件、管理体制等を定め、さらに、華人労務者内地移入手続における中国人労働者の取扱いの細則を定める措置を採ったこと、以上のような移入に関する手続が定められていたにもかかわらず、行政供出等の実態は、前記のとおり、欺罔又は脅迫により、原告らを含む中国人労働者の意思に反して強制的に連行したものであったことが認められる。 また、中国人労働者の日本国内での就労状況についても、昭和一九年次官会議決定において使用条件が定められるなど、雇傭契約の存在を前提とする情況があったことをうかがわせる事情があるものの、その実態は、原告ら中国人労働者の意思にかかわらず、当該事業主との間に一方的に労使関係を生じさせるものであったこと、被告会社における原告らの本件強制労働の実態は、戦時下において日本全体が食糧不足に陥り、一般の日本人の労働条件も悪化していた事情にあったことを考慮しても、居住及び食糧事情、被告会社の従業員による暴力等の点に照らして、劣悪かつ過酷なものであったといわざるを得ない。 (2) 被告会社の責任について 以上のような事情を考慮すると、本件強制連行及び強制労働は、被告らが共同して計画しかつ実行したものであり、被告会社は、原告らに対して民法七〇九条及び七一五条の不法行為責任を負うというべきである。 (3) 被告国の責任について ア しかしながら、被告国については、前記のとおり、被告国による原告らに対する本件強制連行及び強制労働の事実が認められるとはいえ、そのことから直ちに、当時の法体系の下において、被告国に、民法七〇九条、七一五条及び七一九条に基づく不法行為責任が発生すると解することはできない。 |