全 情 報

ID番号 08071
事件名 給与・一時金格差支払請求事件
いわゆる事件名 明石運輸事件
争点
事案概要 トレーラー運送事業等を営むYの従業員として勤務しあるいは勤務していたXらが、〔1〕計5回の一時金支給につき、格差支給を受けたことにより損害を被ったと主張して損害賠償を請求するとともに、〔2〕Yの給与支給額は賃金協定に反してなされた支給であるとして、その受給額と賃金協定に基づく賃金との差額賃金を請求したケースで、労使間の賃金協定が存在することから、Yが給与支給の根拠とした就業規則は労基法92条に反して無効であり、またYによる格差支給は何ら合理的な理由がない差別支給であるとして、Xらの請求を認容した事例。
参照法条 労働基準法92条
労働基準法3章
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則と協約
裁判年月日 2002年10月25日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ワ) 439 
裁判結果 認容(控訴)
出典 労働判例843号39頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔就業規則-就業規則と協約〕
 労基法92条1項は、就業規則は、法令又は当該事業場について適用される労働協約に反してはならない旨を定めているところ、本件就業規則変更は、独立の労働協約である本件賃金協定の存続中になされたものであるので、改正就業規則等の規定が本件賃金協定に反しないかが検討されなければならない。
 労基法92条1項が、就業規則は労働協約に反してはならないとしているのは、就業規則の内容が、労働協約中の労働条件その他労働者の待遇に関する基準、すなわちいわゆる労働協約の規範的部分に反してはならないとの趣旨であり、かつ、有利にも不利にも異なる定めをしてはならない趣旨と解される。したがって、就業規則の内容が労働協約の基準を下回る場合はもとより、就業規則の内容が労働協約の基準を上回る場合であっても、当該労働協約が就業規則によってより有利な定めをすることを許容する趣旨でない限りは許されず、それら労働協約に抵触する就業規則の規定は無効である。
 そこで、これを本件についてみるに、改正就業規則等が本件賃金協定で定められた賃金に関する基準を変更するものであること、すなわち、本件賃金協定の規範的部分を変更するものであること、及びその変更内容が本件賃金協定の基準を下回るものであることは、前記争いのない事実等によって明らかであると認められる(被告は、改正就業規則等は、従業員の実績次第で本件賃金協定に基づいて算定される以上の給与を受け取ることを可能とするものであるから、本件賃金協定の内容を不利に変更したものではないと主張し、被告代表者の地労委における証言記録〔〈証拠略〉〕及び同代表者本人の供述は一応これに沿うが、これを具体的に示す証拠は何ら存在せず、これを採用することはできない。)。
 そうすると、改正就業規則等が、本件賃金協定に反することは明らかであるから、改正就業規則等中、本件賃金協定に抵触する賃金に関する部分の規定は無効である。