ID番号 | : | 08076 |
事件名 | : | 損害賠償等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | NTT東日本(配転請求等)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 電気通信事業を営むYに勤務するXが、Yに対し、〔1〕Yにおいては、他の支店で一定期間勤務すれば従業員の希望する勤務地に転勤させる旨の労使間の合意があり、XについてもYのA支店に転勤させる約束があったとして、A支店に転勤させるよう求めるとともに、〔2〕単身赴任の早期解消を求めてきたにもかかわらず、7年1ヵ月という長期にわたって単身赴任を強いられたなどとして慰謝料等を請求したケースにおいて、〔1〕労働契約上の合意は認められず、また従業員に就労請求権が認められない以上、Xには特定の支店への配転命令の発令を求める権利もなく、〔2〕Y等が、人事権の不行使によって、Xに社会通念上甘受できないような不利益を与えたとまで認めることもできないとして、Xの請求を棄却した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法623条 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界 |
裁判年月日 | : | 2002年11月7日 |
裁判所名 | : | 福島地郡山支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 64 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例844号45頁/第一法規A |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕 原告は、Bセンタの統廃合に伴って、本件配転命令により平成3年3月1日Cセンタに転勤となったものであるが、基本的事実関係の(2)〔1〕、〔2〕のとおり、旧Y社の就業規則に、「社員は、業務上必要があるときは勤務事業所又は担当する職務を変更されることがある」と規定がある上、「社員の配置転換に関する協約」にも、配置転換の対象者は、本人の適性、業務上の必要度、家庭の事情、経験、本人の希望、健康、通勤時間、住宅を総合的に勘案して選定するとされていることからすれば、被告会社等は、業務上の必要性があれば、個々の社員の同意なしに、社員に対し、勤務地の変更を伴う配置転換を命じて、労務の提供を求める権限を有するものというべきである。 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕 被告会社等は、業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるというべきであるが、被告会社等の配転命令権は無制約に行使できるものではなく、これを濫用することが許されないことはいうまでもない。原告が問題としている人事権の不行使という場合にも、不当な動機、目的をもって、あえて人事権を行使しなかったというような場合や当該人事権の不行使により労働者に対し、通常甘受すべき程度を超える特別の不利益を負わせる時など、特段の事情が認められるときは、当該人事権の不行使が権利の濫用となる場合があるというべきである。ただ、使用者は、基本的に業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務すべき場所を決定できるものであり、ここにいう業務上の必要性については、余人をもってしては容易に替え難いといった高度の必要性のある場合に限定すべきではなく、労働力の適正配置、業務の能率の増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点があると認められる限りは業務上の必要性が認められると解されていることなどに照らせば(最高裁昭和61年7月14日第二小法廷判決・裁判集民事148号281頁、判例時報1198号149頁参照)、当該人事権の不行使が権利の濫用となるのは、使用者が、上記のような人事に関する裁量権を逸脱したと認められる場合に限られるというべきである。 |