ID番号 | : | 08116 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分命令申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本オリーブ(解雇仮処分)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 化粧品や医薬品、医薬部外品等の製造、販売等を目的とする株式会社Yに勤務する従業員従業員Xが、Yによる解雇につき、同解雇は、Xに対する不当な排除の意図に基づき、Yの新人事管理基本制度およびこれに伴う賃金制度の導入に対するXの不同意や、Xの提起した賃金の一方的な減額にかかる未払賃金の支払いを求める本訴の提起に対する報復としてなされたものであり、解雇権を濫用したものであって、無効であるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めること及び賃金の仮払を求めたケースで、Y主張の解雇事由である「勤務成績が不良で、勤務に適さないとき」、「やむを得ない業務上の都合」、「その他やむを得ない事由」については、いずれもこれを一応認めるには足りないというべきであって本件解雇は無効といわざるを得ないとされ、Xの申立ての一部が認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法18条の2 労働基準法89条3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 解雇(民事) / 解雇事由 / 就業規則所定の解雇事由の意義 |
裁判年月日 | : | 2003年2月5日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成14年 (ヨ) 469 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部却下 |
出典 | : | 労働判例848号43頁/第一法規A |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 債権者が指示を受けた既存店は、債権者が担当指示を受けた時点で、年間売上げが10万円以上の店舗は1店舗もないことが一応認められるのであり、これらの既存店の営業をしながら新規店の開拓をした場合、1店舗当たりの売上げについて、上記既存店に比較して極端に大幅な売上げを上げることを期待することは困難というべきであって、新規開拓店数に比べて、売上高が伸びないことはやむを得ない面があるといわざるを得ない。 乙15、30には、訪問店数からみて、債権者が新規店開拓の営業努力をしたとはいえない旨の記載があるが、前記のとおり、新規開拓の店数においては、債権者の6店という実績が著しく低いものということはできないのであって、訪問店数の多寡が売上高の低さに結びついているものということはできない。 以上によれば、結果としての新規開拓店の売上高から、債権者の勤務成績が、解雇事由に相当するほどの著しい成績不良に該当すると一応認めることは困難である。 〔解雇-解雇事由-就業規則所定の解雇事由の意義〕 債務者の就業規則19条本文は、「従業員が、次の各号の一に該当するときは、解雇することがある。但し、懲戒により解雇するときは、(懲戒)に定めるところによる。」と規定し、各号として、「(1)精神又は身体の障害により、勤務に耐えられないとき。(2)勤務成績が不良で、勤務に適さないと認められるとき。(3)やむを得ない業務上の都合によるとき。(4)その他やむを得ない事由があるとき。」と規定している。このように、同条は、労働者側に懲戒事由がある場合の懲戒解雇とは別に普通解雇事由を定めたものであるが、労働者側に勤務不能、不適という一定の帰責事由がある場合の解雇事由として1号と2号を規定し、4号の「その他やむを得ない事由があるとき。」以外に3号の「やむを得ない業務上の都合によるとき。」を独立した解雇事由として規定した規定の仕方からすると、3号の「やむを得ない業務上の都合」とは、労働者側には責めに帰すべき事由がなく、専ら使用者側の事情による解雇の場合に限定したものであって、労働者側の事情による解雇は4号に定められたものと解するのが合理的と解される。すなわち、債務者の主張としても、「やむを得ない業務上の都合」として、債権者の服務規律違反による他の社員への影響と債務者の経営状況における債権者の成績不良を挙げているところ、債権者の服務規律違反の点は、4号の「その他やむを得ない事由があるとき。」に該当するか否かとして、成績不良の点は、2号の「勤務成績が不良で、勤務に適さないと認められるとき。」に該当するか否かとして、それぞれ判断の対象となるということができ、3号の「やむを得ない業務上の都合によるとき。」として、債権者にこれらの事由があるか否かを判断することは合理性を欠くものというべきである。 したがって、債権者の服務規律違反による他の社員への影響と債務者の経営状況における債権者の成績不良に基づいて、3号の「やむを得ない業務上の都合によるとき。」という解雇事由に該当するという債務者の主張は、そもそも採用することができない。 |