ID番号 | : | 08126 |
事件名 | : | 地位確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 岡山大学学友会(嘱託員契約解除)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | Y大学学友会の嘱託員として採用されたXが、大学の決定によるYの解散に伴い解雇されたことから、Yに対し、嘱託員としての雇用契約上の権利を有することの確認および賃金の支払いを求めたケースの控訴審で、XとYとの間には雇用契約の成立を認めることはできないとして請求を棄却した一審に対して、XとYとの間に雇用契約の成立を認め、Yによる契約解除が解雇権の濫用に当たり無効であるとしてXの請求を認容した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法9条 労働基準法18条の2 民法1条3項 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 嘱託 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 2003年2月27日 |
裁判所名 | : | 広島高岡山支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成13年 (ネ) 40 |
裁判結果 | : | 原判決変更(上告) |
出典 | : | 労働判例855号82頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-嘱託〕 雇傭契約とは、当事者の一方が他方の指揮監督のもとに労務を提供し、その対価の支給を受ける内容の契約であるところ、上記認定の本件嘱託員契約の内容、嘱託員事務の内容、業務の実態等に照らすと、控訴人ら嘱託員は総務委員会の指揮監督のもとに労務を提供し、その対価の支給を受けていたものと認められるから、本件嘱託員契約は雇傭契約であると認定するのが相当である。 前記認定によれば、本件嘱託員契約では、嘱託員のうちの1人が所定の場所で所定の勤務時間、嘱託員事務を行えばよいとされ、嘱託員のうちの誰がいつ嘱託員事務を行うかの決定も嘱託員に委ねられており、さらに、嘱託員は自己の責任で事務代行者を選任し、上記事務代行者に嘱託員事務を行わせることができるとされていた。また、総務委員会ないし被控訴人は、嘱託員に支給する人件費総額を控訴人を中心とする嘱託員と合意しているのみで、個々の嘱託員ないし事務代行者の取得する額については把握していない。しかし、本件嘱託員契約に基づく嘱託員の事務量はもともと1人で処理できる程度であるにもかかわらず複数の嘱託員が採用されたことから勤務時間について上記のような合意がされたものであり(証拠〔〈証拠略〉〕によれば、総務委員会は、学友会事務の1.1人分〔以前は1人分〕の仕事が履行される限り、嘱託員の誰が事務にあたってもかまわず、1.1人分の仕事に対して1.1人分の給与を支払うという理解であったことが認められる)、雇傭契約において使用者の承諾があれば労務者が第三者をして自己に代わって労務に服させるとの定めを設けること自体は認められること(民法625条2項参照)にも照らすと、上記のような事実は本件嘱託員契約を雇傭契約と認定する妨げにはならない。 〔解雇-解雇権の濫用〕 会則では、被控訴人の会長は大学学長をもってあてるとされているが、会長の権能として明記されているのは顧問の嘱託のみであり、会長が被控訴人の代表権を有する旨の規定はなく、一方、総務委員長が会務を総括するとされており、また、被控訴人の総会の招集権も総務委員長にあり、本件嘱託員契約も、総務委員長が総務委員会を代表して締結している。 しかし、会則には対外的に被控訴人を代表する者について明記された規定はないこと、被控訴人の事業内容及び会則における「会長」という名称に照らすと、被控訴人の会長は被控訴人を代表する権限を有すると認めるのが相当である。 したがって、被控訴人の会長は被控訴人を代表して本件嘱託員契約を解除する権限を有するというべきである。〔中略〕 〔解雇-解雇権の濫用〕 前記認定によれば、大学は、昭和48年に懲戒免職処分を受けた元教養部教官である控訴人が、昭和50年に被控訴人の嘱託員となって以来、控訴人が自主管理自主運営の名の下に総務委員会、幹事会の学生を指導していることが被控訴人の自主運営を阻害し、その目的を十分に果たせない状態に至っているとの認識のもとに教育的見地からこれを改めることを図っていたものであるが、その過程で有志学生からなされた校友会(同会は被控訴人とほぼ同様の目的を持ち、その会則も嘱託員制度を欠く以外は被控訴人の会則とほぼ同内容である)設立の動きを側面から支援し、その設立を承認する一方で、被控訴人を解散する旨決定し、大学構内の被控訴人事務室を閉鎖し、代表者である会長名で、控訴人に対して本件解除の通知をしたものである。 このような事情、経過を総合すると、被控訴人の代表者である会長(大学学長でもある)がなした本件解除は控訴人を被控訴人の嘱託員から排除することを主たる目的としてなされたものと認めるのが相当であり、解雇権の濫用として無効というべきである。 |