ID番号 | : | 08131 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三信自動車事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 自動車の修理、販売などを目的とする合資会社の代表社員Yが、経営悪化のため、会社の解散を決意し、全従業員に対して解雇予告通知をしたが、それに反対した合資会社従業員Xが組合に加入し、その組合がYと団体交渉をした結果、Xの任意退職について、Yが形を変えて営業する際はXを再雇用すること、並びにXを再雇用するまでの間の金銭面での不利益分の補償を規定した協定書を締結し、そして後にYが個人の修理工場を開業した際に、Xが協定書にはXとYの私人間の契約としての効力も存在するとして、〔1〕Yとの雇用契約上の地位にあることの確認、〔2〕協定書に基づく金員の支払いを請求したが、書面により、労働組合法14条の定める内容に関して労働協約の成立要件を具備する合意がなされた場合には、特段の事情が認められない限り、それは全体として労働協約として成立したと解するべきであり、その一部について労働協約の当事者以外の者を当事者とする私法上の合意が併存すると解釈することには慎重でなければならないとし、〔1〕の請求が棄却され、また〔2〕の請求については、協定書が解約されたまでの期間についてのみYに対して無限責任社員の責任としてその支払いが認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法3章 労働組合法14条 労働組合法15条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 営業の廃止と賃金請求権 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 協約の成立と賃金請求権 |
裁判年月日 | : | 2003年3月13日 |
裁判所名 | : | 東京地八王子支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成11年 (ワ) 2801 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例848号5頁/労経速報1861号3頁 |
審級関係 | : | 上告審/最高三小/平16. 2.10/平成15年(オ)1841号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権の発生-営業の廃止と賃金請求権〕 〔賃金-賃金請求権の発生-協約の成立と賃金請求権〕 原告は、本件協定書は、会社と組合が調印しているが、会社は解散することを定めているから、労使間の協定として意味合いは薄く、むしろ原告の雇用を約することに主眼があったというべきであり、本件協定内容のように本来労働協約の対象事項ではない事項について協定する場合に、組合員個人が調印するのは、原告個人としても協定の合意内容について当事者として調印する意味を有するというべきであると主張する。 しかしながら、会社が解散することを予定しているとしても、合資会社は、解散しても清算の目的の範囲内ではなお存続するものとされ、清算人は債務の弁済をすることができるのであるから(商法147条、116条、124条)、会社として組合と労働協約を締結することが意味のないことではないこと、また、本件協定書は、その前文で、会社と組合とが合意をしたことを明示しているから、明らかに労使間の協定をその内容としていると解されるところ、本件協定書に原告の記名捺印がなされていることについては、本件協定書による労働協約が原告の地位を奪う結果となる退職をもその対象としており、退職及び退職金に関する労使間の合意の内容が原告に対して効力を有するため、原告が重要な利害関係人として本件協定書の内容に同意したことに由来すると解することができることからすると、本件協定書に原告の記名捺印があることをもって、原告個人が当事者となる契約が含まれていると解さなければならないものではない。〔中略〕 〔賃金-賃金請求権の発生-営業の廃止と賃金請求権〕 〔賃金-賃金請求権の発生-協約の成立と賃金請求権〕 本件協定書に基づく労働協約は、本件解約通知により、平成10年10月28日をもってその効力を失っていると解すべきである。また、本件協定書は原告が会社を退職することを前提としている以上、本件協定書に基づく労働協約の内容が、原告と会社との間の個別労働契約の内容として効力を持続すると解する余地はない。 |