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ID番号 08134
事件名 損害賠償請求事件(631号)、損害賠償請求事件(453号)
いわゆる事件名 滋賀・知的障害者虐待損害賠償訴訟第一審判決
争点
事案概要 肩パッドの製造・加工を業とするA社の従業員である身体障害者や知的障害者及びその相続人(死亡したBの両親)Xらが、〔1〕その経営者であるY1に対して、暴力・虐待を受けたこと、休日労働の強制等、労働基準法34条ないし37条、39条の違反の状況を強制され、また、劣悪な労働条件のもとで長時間の作業を強制されたこと、最低賃金法5条違反の低賃金支払及び賃金の不払いがあったこと、Xらの障害基礎年金が横領されたこと、Xらの障害基礎年金受給権を担保として借り入れた金銭が詐取された、Xらの一部の者の預金が横領されたこと、等を理由として民法709条及び商法266条ノ3第1項に基づき損害賠償を請求、〔2〕Xらが入所していた知的障害者更生施設に、Xらの就労先についての事前・事後の調査等義務違反がある等として、その設置者である滋賀県Y2に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求、〔3〕国Y3に対し、その機関である労働基準監督署の労働基準監督官の労働基準法、労働安全衛生法及び最低賃金法上のA社に対する監督権限の不行使は違法であるとして、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求、〔4〕国Y3に対し、その機関である公共職業安定所の職業安定法上のA社に対する監督権限の不行使は違法であるとして、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求したケースで、〔1〕については、上記Xら主張の事実を認め、Y1の行為は不法行為となるとして、Xらの請求が認容され、〔2〕については、知的障害者更生施設には、Xらの就労先の事前・事後の調査等義務があり、これを怠った場合には当該知的障害者に対する関係で違法になることがあるとした上で、Bに対する関係でのみ違法行為を認め、Y2に対するB相続人X2名の請求のみが認容、その余の請求が棄却され、〔3〕については、労働基準監督官が、労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法等の労働関係法規違反による労働者の権利侵害を認識し得る場合において、その権限の不行使が合理的判断の範囲を逸脱した時は、その不作為は当該労働者との関係で国家賠償法1条1項の違法行為にあたるとした上で、従業員の保護者からの権利救済の申立てに関するA社の従業員についての賃金支払状況の監督行為は適切なものであったとは言い難く、また、Xらのうち6名からのA社の実情を訴える手紙を受理しながら、A社における労働関係法規違反の有無をなんら調査等を行わなかったこと、A社の調査・指導を求める匿名電話による相談につき具体的な対応をしなかったことが、合理的判断の範囲を逸脱し、手紙の受理当時、匿名電話による相談があった当時におけるA社に雇用されていた全従業員との関係で違法であるとして、Xらのうち一部の者を除く者の請求が認容、その余の請求が棄却され、〔4〕については、公共職業安定所が、当該障害者が雇用されている職場に適応することを困難にするような事情を認識し得る場合において、当該障害者や事業主に対し指導等を行わないことが合理的判断の範囲を逸脱する場合に、また、職場適応訓練を実施するにあたり、必要な調査・指導等を行わない場合には、一定の場合に、当該不作為が国家賠償法1条1項の違法行為にあたるとした上で、XらのうちBについてのみ不作為の違法があったとして、B相続人2名の請求が認容、その余の請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法104条
国家賠償法1条1項
体系項目 監督機関(民事) / 監督機関に対する申告と監督義務
裁判年月日 2003年3月24日
裁判所名 大津地
裁判形式 判決
事件番号 平成8年 (ワ) 631 
平成9年 (ワ) 453 
裁判結果 一部認容、一部棄却(一部控訴、一部確定)
出典 時報1831号3頁/第一法規A
審級関係
評釈論文 吉田邦彦・判例評論544〔判例時報1852〕173~183頁2004年6月1日/橋本宏子・神奈川法学36巻3号245~293頁2004年3月/木下秀雄・賃金と社会保障1357号30~35頁2003年11月10日
判決理由 〔監督機関-監督機関に対する申告と監督義務〕
 本件手紙が労基法一〇四条所定の申告にあたるか否かにかかわらず、C労基署が本件手紙を受理しながら、A社における労働関係法規違反の有無について何ら調査等を行わず、「しばらく経過をみることとしたい。」として処理したまま、その後も何の対応もしなかったことは、C労基署の合理的判断として許される範囲を逸脱したものであったというのが相当であって、このようなC労基署の対応は、本件手紙の差出人だけでなく、A社の従業員全員との関係において違法なものであったというべきである。