ID番号 | : | 08138 |
事件名 | : | 損害賠償等請求各控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | JR西日本吹田工場(踏切確認作業)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 旅客鉄道事業等を営む株式会社Y2の工場で勤務し組合員であるX1、X2が同工場の総務科長であるY1から違法な作業指示を受けたなどと主張して、〔1〕Y1・Y2に対し、不法行為(Y2については使用者責任ないしは、前記作業指示がY2による業務指示である場合には不法行為責任に基づき)による損害賠償請求権に基づく慰謝料等の支払を請求し、又、〔2〕X1は温度計を持ち出したことを理由に訓告処分を受けたことにつき、これは処分としての相当性を欠くとして、同処分の無効確認を請求したケースの控訴審(Xら、Yら、ともに控訴)で、〔1〕について、炎天下で日除けのない白線枠内に立って、終日踏切横断者の指差確認状況を監視、注意する作業指示は、同工場で労災事故が多発し、またB支社の車両課長から厳重注意を受け特別な施策の実施を求められており、安全の確保という必要性が認められるが、その内容等に照らせば労働者の健康に対する配慮に欠け、使用者の裁量権を逸脱する違法なものであったといわざるを得ず、またX1のY1に対する「あんた」発言を原因として嫌がるX1の腕を3回も引っ張って事務所へ連れて行こうとする行為は正当な業務指示とは言えず、違法であるとして、Xらの慰謝料請求を一部認容した原審の判断が維持されて、〔2〕について、X1の行為の態様等に鑑みれば、職務上の規律を乱した場合で懲戒を行うには至らないものに該当し、また処分として相当性を欠くものとはいえないとして、Xらの請求を棄却した原審の判断が維持されて、Xら、Yら双方の控訴が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 民法710条 労働基準法89条9号 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 服務規律違反 |
裁判年月日 | : | 2003年3月27日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成14年 (ネ) 264 |
裁判結果 | : | 各控訴棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例858号154頁 |
審級関係 | : | 一審/07900/大阪地/平13.12.26/平成12年(ワ)11854号 |
評釈論文 | : | 小畑史子・労働基準56巻4号36~41頁2004年4月 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 本件作業は、最高気温が摂氏34度から37度という真夏の炎天下で、日除けのない約1メートル四方の白線枠内に立って、終日、踏切横断者の指差確認状況を監視、注意するという内容のものであって、1時間に5分という休憩時間が与えられ、随時、トイレに行ったり氷を取りに行くこと等が可能であり、半日の日もあったとはいえ、肉体的、精神的に極めて過酷なものであり、労働者の健康に対する配慮を欠いたものであったといわざるを得ない。身体障害者であるAは、本件作業に従事して半日で足がしびれ作業の継続が困難となり、また、原告X1も立っていることが困難となったことがあること(原告X1)、原告X2も、4、5時間経つと紫外線で目が痛くなって頭がぼんやりとしたこと(原告X2)が認められるが、これらは本件作業が、労働者の健康に対する配慮に欠けるものであったことを裏づける。そして、上記の過酷さに、本件作業が従前吹田工場内で行われていた定点監視作業とは、監視時間の長さや白線枠の設定の点でその内容を異にするものであること、原告らが従事した本件作業の実施については、本来、京都支社に報告されるべきものであるにもかかわらず、実際は報告されていないこと(〈証拠略〉、被告Y1)を合わせ孝慮すれば、本件作業は、その内容が単に肉体的、精神的に過酷であるのみならず、合理性を欠き、使用者の裁量権を逸脱する違法なものであったといわざるを得ない。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-服務規律違反〕 本件作業はその内容が過酷で合理性を欠き違法ではあるものの、温度については新聞等の気象情報などにより十分把握できること(〈証拠略〉)からすると、本件温度計の持出し行為はやむを得ない行為とは解されず、原告X1は、本件温度計を管理者に無断で持ち出した上、二度にわたり持出しを否定して隠匿したものであって、結果的に返還されているから被告会社に財産的損害が発生していないとしても、原告X1の上記行為は、就業規則第146条3号所定の「職務上の規律を乱した場合」に該当するというべきである。そして、被告会社が原告X1に対し上記行為が就業規則第147条第2項所定の「懲戒を行う程度に至らないもの」として訓告処分を行うことにつき、処分の均衡を疑わせるような事情もなく、処分としての相当性を欠くとはいえない。 したがって、被告会社が原告X1に対して科した本件訓告処分は有効である。 |