ID番号 | : | 08141 |
事件名 | : | 就労義務不存在確認、賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 本山製作所(別棟就労命令拒否)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 各種バルブの製造販売等を業とする株式会社Yの従業員であったXらが、YがXらの加入する労働組合の組合員に対し、他の従業員とは別の棟で就労するよう命じ、これに従わなかった組合員の就労を拒み、賃金を支払わなかったことから、本件就労命令は不当労働行為であり、無効である等として、労務の受領拒絶を理由に未払賃金の支払を求めた事案で、裁判所は、別棟就労命令は、緊迫した労使関係のもと、紛争を未然に回避する暫定的な措置として、その必要性が是認され、その期間についてのXらの賃金請求については否定したが、一方、Xらが、就労交渉に望むことを表明し、就労に必要な教育訓練を受けることを拒んでいない平成3年10月以降の就労不能については、Yの責に帰すべき事由によるもので、かつ、Xらは客観的に就労の意思及び能力を有していたものと認めるのが相当であるとし、Xらの賃金請求を認めたが、その具体的な額については、賃金交渉において、Xらが独自の賃金額を主張するなど、賃金条件の合意を困難にする態度をとったなど、不就労状態の継続につき相応の責任があることを考慮すると、Yが支払うべき賃金額は、この間のXらの賃金額の6割とするのが相当と認められるとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法3章 民法536条2項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 組合間紛争による不就労 |
裁判年月日 | : | 2003年3月31日 |
裁判所名 | : | 仙台地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和50年 (ワ) 123 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却、一部却下(控訴) |
出典 | : | 労働判例849号42頁/第一法規A |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権の発生-組合間紛争による不就労〕 労働契約に基づく労働者の労務を遂行すべき債務が使用者の責に帰すべき事由により履行不能になったときは、労働者は、現実には労務を供給していなくても、賃金の支払を請求することができるところ(民法536条2項)、使用者が労働者の就労を拒否する意思を事前に明確にしているときも、労働者の労務を遂行すべき債務は履行不能になるというべきであるけれども、この場合に労働者が賃金の支払を受けるためには、一方において、それが使用者の責に帰すべき事由によること、他方において、その時点において労働者が客観的に就労する意思と能力を有することが必要と解するのが相当である。 (3) これを本件についてみるに、被告が別棟以外での原告らの就労を拒んだことは前示の事実から明らかであるから、この就労の拒絶により原告らの労働契約上の労務を遂行すべき債務が履行不能の状態にあったというべきである。〔中略〕 別棟就労命令が適法である以上、被告がこれに従わない原告らの労務を受領することを拒み、その結果原告らの労務を遂行すべき債務の履行が不能になったからといって、その不能が被告の責に帰すべき事由によるものということはできない。 (ウ) したがって、別棟就労の必要性が存続する限り、原告らがこれを拒んでその期間就労しなかった場合には、原告らには被告に対する賃金請求権が発生しないというべきである。〔中略〕 原告らの平成3年10月以降の就労不能については、被告の責に帰すべき事由によるもので、かつ原告らは客観的に就労の意思及び能力を有していたものと認めるのが相当である。 しかしながら、原告らにもイ(オ)のとおり不就労状態の継続につき相応の責任があることを考慮すれば、被告が実際に支払うべき賃金額は、この間の原告らの賃金額の6割とするのが相当と認められる。 |