ID番号 | : | 08156 |
事件名 | : | 賃金請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | キョーイクソフト事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 教育に関する研究資料の製作及び販売等を目的とするYに雇用され、その業務推進部業務課に勤務するXらが、Yの就業規則の変更の内、Xらの賃金にかかる部分がXらとの関係で無効であると主張して、変更前の基準に従って計算された賃金と変更後に支払われた賃金の差額等の支払を請求した事案の控訴審で、一審の結論と同様に、本件就業規則改定は、これに同意しないXらとの関連において、Xらの被る賃金面における不利益程度は重大であり、これに対する代償措置も十分なものではなく、組合及びXらとの交渉の経緯もYが新賃金規定を一方的に説明したにとどまるものであって、そのような不利益を法的に受忍させることもやむを得ない程度の高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであると認めることはできないと判断し、Yの控訴を棄却した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法3章 労働基準法89条2号 労働基準法93条 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与 |
裁判年月日 | : | 2003年4月24日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成14年 (ネ) 3909 |
裁判結果 | : | 控訴棄却(上告) |
出典 | : | 労働判例851号48頁 |
審級関係 | : | 一審/07977/東京地八王子支/平14. 6.17/平成9年(ワ)791号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-賃金・賞与〕 当裁判所も、賃金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきところ、本件就業規則改定は、賃金制度を年功序列型から業績重視型に改め、従業員間の賃金格差を是正することを目的としたものであり、その経営上の必要性があったことを否定することまではできないが、その内容は、賃金を高年齢層から低年齢層に再配分するものであり、被控訴人らを含む高年齢層にのみ不利益を強いるものとなっており、総賃金コストの削減を図ったものではない上、これにより被控訴人らの被る賃金面における不利益の程度は重大であり、これに対する代償措置も十分なものではなく、組合及び被控訴人らとの交渉の経緯も控訴人会社が新賃金規程を一方的に説明したにとどまるものであったから、本件就業規則改定は、これに同意しない被控訴人らとの関係において、そのような不利益を法的に受忍させることもやむを得ない程度の高度の必要性に基づいた合理的な内容のものであると認めることはできないものと判断する(なお、控訴人は、当審において、控訴人会社の未収金は回収不能であり、控訴人会社は経営危機にあったとして、本件就業規則改定の必要性があった旨主張するが、本件就業規則改定の内容は、いわば高年齢層の犠牲において賃金を高年齢層から低年齢層に再配分するものであり、総賃金コストの削減を図ったものではないこと等に鑑みると、控訴人の主張は、本件就業規則改定の内容に上記のような合理性があるとは認められないとする上記の判断を左右するものではない)。その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決「事実及び理由」の「第4 判断」1ないし7記載のとおりであるから、これを引用する。〔中略〕 当該規則条項が合理的なものであるとは、当該就業規則の作成又は変更が、その必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法規範性を是認することができるだけの合理性を有するものであることをいい、特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずるものというべきである。この合理性の有無は、具体的には、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合等との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断すべきである(最高裁判所平成9年2月28日第2小法廷判決・民集51巻2号705頁参照)。 |