ID番号 | : | 08170 |
事件名 | : | 従業員地位確認等請求控訴事件(272号)、同附帯控訴事件(359号) |
いわゆる事件名 | : | 奥道後温泉観光バス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 一般旅客自動車運送事業、ホテル、ゴルフクラブなどの事業を経営するYの従業員であるX1とX2は、Yから整理解雇されたことを不服とし、解雇無効を主張し、〔1〕地位確認と〔2〕賃金の支払いを求めた事案であり、〔1〕については、観光バス会社の運転手に対する、長期にわたる経営不振を理由とする整理解雇につき、経営不振の事実は認められるものの、解雇後も多くの嘱託運転手を雇用して貸切りバス業を営業するなど人員削減の必要性に疑問があり、また労働者側への説明が不十分であること等から、解雇権の濫用に当たり無効とした原審の判断を維持し、〔2〕については、通勤手当は、賃金の一部ではなく、実費保障としての性質を有するとするYの主張を受け入れ、通勤手当の部分についてはその支払いを否定したが、賃金算定について、X1、X2の解雇後に行われた賃金減額を伴った変更賃金規定に従うべきであるとするYの主張については、就業規則による不利益変更法理に従って、労使交渉が十分でない点から変更の合理性を否定し、X1、X2の賃金を算定する上で、変更賃金規定の適用はできないとし、さらに、原審の判断が出された後に行われた、X1、X2についての懲戒解雇、ならびに普通解雇について、著しく不合理であり、社会通念上相当なものとして是認することができないとし、解雇権濫用で無効とした事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法18条の2 労働基準法89条3号 労働基準法89条2号 労働基準法3章 労働基準法93条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件 解雇(民事) / 解雇権の濫用 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与 |
裁判年月日 | : | 2003年5月16日 |
裁判所名 | : | 高松高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成14年 (ネ) 272 平成14年 (ネ) 359 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(272号)、棄却(359号)(上告) |
出典 | : | 労働判例853号14頁 |
審級関係 | : | 一審/07957/松山地/平14. 4.24/平成12年(ワ)1046号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕 〔解雇-解雇権の濫用〕 控訴人は、原判決が被控訴人らの解雇(本件解雇)を無効としたのは誤りである旨主張するが、控訴人の多岐に亘る詳細な主張に即して検討しても、当裁判所の認定・判断も、原判決がいわゆる整理解雇の4要件等を総合的に判断して、本件解雇を解雇権の濫用として無効なものとした認定・判断と同様である。 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-賃金・賞与〕 本件賃金規程の作成は、いわゆる就業規則の不利益変更に当たるものであるところ(そのこと自体は控訴人も認めている。なお、〈証拠略〉及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件賃金規程の適用によって、被控訴人らの賃金額は、被控訴人X1について約10パーセント、同X2について約13パーセントのかなり大幅な減額となるものと推認される。)、賃金等の労働者にとって重要な権利等に関する実質的な不利益を及ぼす就業規則の変更については、当該条項が、そのような不利益を労働者に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生じるものというべきである。 そして、一般的には、上記合理性の有無は、就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、労働組合等との交渉の経緯等諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。 そうすると、本件では、先に補正引用した原判決の「事案の概要」欄中の「前提となる事実」のとおり、被控訴人X1は、本件賃金規程の作成当時、組合員数は少ないとはいえ、控訴人内で唯一の労働組合である観光バス組合の委員長であり、同X2はその書記長であったものであり、その同組合において重要な地位を有する両名が、先に補正引用した原判決の認定のように、解雇権の濫用に当たると認められる解雇により、控訴人従業員としての地位を否定されていたのであるから、当時、被控訴人らは、同組合における重要な地位に伴う影響力を十分に発揮することができない状況にあったと推認されるのであって、このような場合、かなり大幅な賃金の減額を伴う本件のような就業規則(本件賃金規程)の変更においては、使用者側と労働組合との交渉が十分ではないことが著しい場合に該当すると解し、その点においてすでに上記合理性を欠いているものとして扱うべきであり、被控訴人らとの間においては、就業規則である本件賃金規程の適用はできないものと解するのが相当である。 |