ID番号 | : | 08193 |
事件名 | : | 従業員地位確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 大阪証券取引所(仲立証券)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | Yが開設する有価証券市場において媒介業務を行っていたA証券会社の元従業員であり、Y社労働組合の組合員であるXらが、A社の解散に伴い解雇された場合において、〔1〕A社にはYからの独立の企業としての実体がなく、法人格否認の法理が適用され、かつ、〔2〕原告らの解雇は、被告による不当労働行為に該当するなどとして、雇用上の地位の確認などを求めた事案につき、〔1〕YはA社に対して、支配力を行使していたが、A社はいまだ形骸化して、Yと組織的にも一体化しているとはいえないとし、法人格否認の法理の適用を否定し、さらに、〔2〕A社の解散に対して、YはY社組合からの団体交渉の申し入れには応じていないが、これまでのYと組合との労使関係などを考慮すると、団体交渉に応じずA社の解散決議をしたことは不当労働行為意思に基づくものと認めるのは困難であるとし、原審の判断を維持し、Xらの請求を棄却した事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法10条 労働基準法2章 労働組合法7条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 試用期間 / 試用期間の長さ・延長 |
裁判年月日 | : | 2003年6月26日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成14年 (ネ) 975 |
裁判結果 | : | 控訴棄却(上告) |
出典 | : | 労働判例858号69頁 |
審級関係 | : | 一審/07919/大阪地/平14. 2.27/平成12年(ワ)6801号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-試用期間-試用期間の長さ・延長〕 以上によれば、Aは、独立の法人としての実体及び会社組織を備えていたことは明らかであり、Aが被控訴人と実質的に同一であって、その法人格が形骸化しているものと認めることはできないから、法人格の形骸化による法人格否認の法理の適用により、Aの法人格を否認して、控訴人らと被控訴人との間に雇用関係が存する旨の控訴人らの主張は、採用することができない。〔中略〕 法人格の濫用による法人格否認の法理は、法人格を否認することによって、法人の背後にあってこれを道具として利用して支配している者に対し、法律効果を帰属させ、又は責任追及を可能にするものであるから、その適用に当たっては、法人を道具として意のままに支配しているという「支配」の要件が必要不可欠であり、また、法的安定性の要請から「違法又は不当な目的」という「目的の要件」も必要とされるのであり、法人格の濫用による法人格否認の法理の適用に当たっては、上記「支配の要件」と「目的の要件」の双方を満たすことが必要であると解される。 前記認定事実によれば、被控訴人がAの実質的な親会社(支配株主)としての地位、Aの中心的な業務である媒介業務に対する仲立手数料は、被控訴人の業務規程及び業務規程施行規則によって定められており、また、媒介業務の作業内容、作業手順等は、被控訴人の定款等によって定められていたこと等により、被控訴人は、Aに対して支配力を行使できる立場にあり、Aの解散に至るまでに相当の支配力を行使してきたことは事実であるが、被控訴人による上記支配力の行使が、A分会を壊滅させ、Y社労組を弱体化させる不当労働行為意思に基づいてされたとまで認めることはできず、結局、上記「目的の要件」を充足するものと認めることはできないから、法人格の濫用による法人格否認の法理を適用することはできない。 |