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ID番号 08194
事件名 文書提出命令に対する抗告事件
いわゆる事件名 塚腰運送(文書提出命令)事件
争点
事案概要 運送業を営む株式会社であるYの輸送技術部門に所属するドライバーであるXらが、同部門が不採算部門であるとして行われた人事異動命令の無効確認を求めて本案訴訟を提起したところ、Yが売上振替集計表の輸送技術部門以外の部分を黒塗りしたものを証拠として提出したため、Xらが黒塗り部分の開示・提出を申し立てたケースの抗告審(Yが即時抗告)で、売上振替集計表の全体が明らかにならなければ人事異動の根拠となる輸送技術部門の売上高について判断することができず、他方、企業秘密を理由に提出を免れることはできないとして、Xらの申立てを認容した原決定の結論を相当とし、本件集計表を民事訴訟法220条1号所定の引用文書に該当するとした上で、本件除外部分の開示が義務付けられないとすれば、当事者は、1個の文書のうち自己の都合の良い部分のみを先行的に開示し、それ以外の部分を引用文書でないと言い張ることが許されることになり、文書の信頼性につき他方当事者と裁判所が不公正な心証を形成する危険性を回避するという民事訴訟法220条1号の規定の目的を形骸化させることになり相当ではないとして、また、本件除外部分は、本件集計表の体裁、本件抜粋部分の内容に照らせば、民事訴訟法220条4号ニの除外文書に該当しないとして、Yの抗告が棄却された事例。
参照法条 民事訴訟法220条1号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転・出向・転籍・派遣と争訟
裁判年月日 2003年6月26日
裁判所名 大阪高
裁判形式 決定
事件番号 平成15年 (ラ) 115 
裁判結果 棄却
出典 労働判例861号49頁
審級関係 一審/08101/京都地/平15. 1.15/平成14年(モ)2133号
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転・出向・転籍・派遣と争訟〕
 引用文書が提出義務の対象文書とされているのは、訴訟の当事者の一方が、自ら訴訟を有利に展開するため、文書の存在を積極的に主張した場合には、当該文書を開示させ、文書の信頼性につき他方の当事者と裁判所の批判にさらすことにより、当該文書が存在することに起因して裁判所が不公正な心証を形成する危険を回避するためである。
 したがって、抗告人は、本件抜粋部分を裁判所に提示した以上、本件集計表の信頼性が相手方及び裁判所によって吟味されることを拒否することは許されないのであり、本件集計表を開示する義務を負う。仮に、本件除外部分の開示が義務付けられないとすれば、当事者は、一個の文書のうち自己の都合の良い部分のみを先行的に開示し、それ以外の部分を引用文書でないと言い張ることが許されることになり、民事訴訟法220条1号の規定の上記目的を形骸化させることができることになり、相当ではない。