ID番号 | : | 08204 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分命令申立事件 |
いわゆる事件名 | : | アンフェノールジャパン事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 電気・電子コネクターの製造などを業とするYが、就業規則上の解雇規定(「技術または能率が著しく低劣のため、就業に適しないと認められたとき」)に該当するとして、従業員Xを解雇したことに対して、Xは本件解雇は、〔1〕解雇事由に該当せずXを排除するという不当な意図のもと行われ、また〔2〕YがXの個別の労働条件を変更する場合は、事前にXの同意を得るように努力し、ユニオンから交渉の申し入れがあった場合には、誠実に協議する旨の条項に反したものであるとし、権利の濫用で無効であるとし、Yに対し、地位の確認、ならびにその期間の賃金を請求した事案で、裁判所は、〔1〕Xは、営業社員としての能力が劣り、協調性も欠如しており、また改善の見込みも乏しいとし、また、〔2〕Yは、本件条項に定められたXの同意を得るための必要な努力をしたとし、Xの請求が却下された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量 |
裁判年月日 | : | 2003年7月14日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成14年 (ヨ) 437 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労経速報1848号18頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕 債権者は、入社一〇年以上にもかかわらず、パソコンの操作能力が低く、一人でマコーラシステムを使ったり、満足に本社サーバーにアクセスすることができず、これら操作が必要な業務を他の社員に押し付けるなどし、以下〔5〕ないし〔8〕のとおり、営業社員として当然なすべき業務を怠った。〔中略〕 債権者には、(a)たとえば、他の社員が残業で多忙なときでも、パソコンができないからと言って、見積書の作成を押し付けるなど、ほかの社員に対する協調性や思いやりが乏しく、また、(b)たとえば、自分の担当顧客の発注した部品の一部が他の部署のミスで出荷されなかった際には、ミスをカバーするため顧客に発注の取消を依頼するどころか、自己に非がないことを立証するため、担当者に経緯書を書かせるなど、頻繁に仕事や責任を他人に押し付けていたほか、(c)理屈ばかり並べて反論するなどの傾向から、仕事で迷惑を掛けた多くの社員から嫌悪されており、このような他の従業員の反発は、容易に解消しない状態にある。〔中略〕 以上のような勤務ぶりのため、人事評価は、平成一一年度冬季から平成一三年度冬季の債権者に対する人事評価は、D、D、B-、B+、Cであり、債権者の属するより低いランクにいる社員は、平成一三年夏季を除き、それぞれ〇名、〇名、五名、二名と極めてわずかな人数に止まっていた(人事評価の対象人員は、約四〇ないし七〇名である)。 一方、債務者では、平成一二、三年頃から名古屋営業所に支店長が常駐しなくなり、債権者の勤務態度の問題点がかならずしも全体的に把握できておらず、また売上低下による経営状態の悪化などもあって代替人員の確保が困難なため、発覚していた問題点に対しても、前件紛争以後は、直ちに債権者を担当から外すなどの措置を取ることができないまま経過していた。 (2) 以上の事実によれば、債権者は、営業社員としての能力が劣り、協調性も欠如しており、また改善の見込みも乏しい状況にあって、本件規則一八条三号、六号所定の解雇事由があると一応認めるのが相当であるから、整理解雇の要件の有無などその余の点について検討するまでもなく、本件解雇には理由があり、債権者は、本件労働契約上の地位を喪失したといわねばならない。 |