ID番号 | : | 08448 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | |
争点 | : | 品質管理システム審査機関の従業員が、更新拒絶に対し地位確認を請求した事案(労働者敗訴) |
事案概要 | : | 品質管理システムの国際規格であるISO9000等の審査業務の委託を受ける協会に雇用され、1年の有期雇用契約を締結して審査業務に従事していた従業員が、期間満了による更新拒絶(雇止め)を受けたことにつき、雇用契約上の地位確認を請求した事案である。 横浜地裁は、同協会における契約審査員の雇用契約は、1年ごとに当該審査員の審査業務に対する知識、技能などに問題がないか検討するため1年の有期雇用契約とされていること、原告は途中から予備審査の担当から外されていたこと、契約更新の際には、必ず協会及び当該審査員双方の意思を確認し、雇用契約書を新たに作成し直していること、本件については雇用契約が一度も更新されていないこと等からすると、同従業員に本件雇用契約の更新を期待させる事情があったと認めることはできないとして、請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)/短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 2004年3月12日 |
裁判所名 | : | 横浜地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成13(ワ)1883 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | タイムズ1213号148頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 ア 本件雇用契約は、1年の期間の定めのある有期雇用契約であったところ、原告は、原告には契約更新を期待するべき合理的な事情があり、本件雇止めには解雇権濫用法理が類推適用されるべきであると主張する。 しかし、被告における契約審査員の雇用契約は、本件雇用契約に限らず雇用期間が1年とされていたこと、契約更新はあり得るものとされたが、契約更新の際には、必ず被告及び当該審査員双方の意思を確認し、雇用契約書を新たに作成し直すこと、更新された雇用契約の期間も1年であり、この手続は契約更新を何回繰り返しても同じであること、このような契約更新の方法を採っているのは、1年ごとに当該審査員の審査業務に関する知識、技能等に問題がないかどうか検討するためであり、被告の審査員の業務内容が、高度な専門的知識を要する審査である関係上、審査員の知識、技能等を1年ごとに厳しくチェックして審査員の質を維持しなければならない要請があること、原告は平成11年10月のI118社の件以降単独で予備審査を行わせることは適当ではないとして予備審査の担当から外されていたこと、原被告間の本件雇用契約は1度も更新されていなかったことは、いずれも上記(1)及び(2)に認定したとおりである。さらに、上記(1)及び(2)認定の事実関係に照らせば、被告が一定のコストをかけて審査員教育を実施することに審査員の質を確保するという以上の意味を見出すことは困難であること、被告が原告に対しQS9000審査資格を取得するよう勧めたのは、原告にISO9000シリーズの審査員としての知識、技能等がないことが明らかになった後における救済措置にすぎないものと考えられること、原告が本件雇用契約の期間満了後である平成12年5月及び6月の原告の審査予定が記載されたスケジュール表の交付を受けたのは、原告がA事業部長から本件雇止めの告知を受けた後であるから、当該スケジュール表の交付を受けることによって契約継続の期待が合理的に生ずると見ることは困難であること、被告が原告に対して上記期間満了後である同年7月の審査命令を出したのは、当初同年4月に予定されていた審査案件が受審企業の都合で後に同年7月に延期されたためであるというのであるから、そのことだけで契約継続の期待が合理的に生ずると見るのも困難であること、以上の諸点を指摘することができる。 以上のような事情の下においては、原告に本件雇用契約の更新を期待させる事情があったと認めることは到底できないものというべきである。 イ そして、上記(2)イ及びウ認定の事実によれば、原告は、ISO9000シリーズが、特定の品質システムを要求しているのではなく、その規格適合審査は、受審企業に現存するシステムがISO規格の要求する要素を含み、ISO規格の定める品質管理に資するよう機能するかどうかを受審企業の実態及びニーズに応じて判断するものでなければならないにもかかわらず、受審企業の個別的、具体的な事情等を理解しないまま、ISO規格の要求する品質システムとして原告が正しいと考える特定の品質システムの採用を求め、これが採用されていないと不適合とするという審査を行っているものということができ、原告がISO規格を正しく理解していないこと、受審企業の説明を聞かず、その実情を理解しようとする姿勢を欠いていること、受審企業の担当者に対し、高圧的あるいは横柄な接し方をし、被告の指示に反する高額の食事代を当然のように受審企業に負担させようとするなど、顧客である受審企業に対する態度に極めて問題があること、原告はLRQAの審査員として必須である英語の理解力が不十分であり、審査員として最も基本的なISO規格の改訂に対応する研修に遅刻し、再教育の資料を紛失し、研修内容についての試験結果も劣悪であるなど、審査員として必要な知識を習得しようとする意欲及び能力に欠けること、LRQAの主任審査員やA事業部長らとの関係においても、自己の見解に固執し、他者の意見が自己と異なる場合これを受け入れようとせず、相手を威圧してでも自己の見解を押し通そうとする態度をとっていること、以上の諸点を指摘することができ、これらの事実に照らすと、原告は、LRQAの審査員として必要な知識及び技能等を欠いているものというべきである。 ウ 以上の次第であって、原告には本件雇用契約の更新を期待するべき事情は認められず、その他、本件雇止めを違法と評価するべき事情も認められないから、本件雇止めは適法であり、本件雇用契約は、契約期間が満了した平成12年5月16日の経過をもって終了したものというべきである。したがって、原告の地位確認及び本件雇止め後の賃金請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。 2 争点(2)(不法行為の成否)について 本件雇止めが適法であることは、上記1(3)ウのとおりであり、その他被告が原告に対し不法行為を行ったと認めるに足りる証拠はない。 したがって、その余の点について判断するまでもなく、この点に関する原告の請求には理由がない。 |