ID番号 | : | 08523 |
事件名 | : | 遺族補償給付不支給処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 真岡労基署(新入社員過労自殺)労災事件 |
争点 | : | 食品販売会社の労働者自殺は過労によるとして遺族が遺族補償の支給を求めた事案(遺族勝訴) |
事案概要 | : | 食品販売会社の営業職に従事していた23歳の労働者が、時間外労働時間が増加するなどする中、精神障害を発症し、正常の認識及び行為選択能力が著しく阻害されている状態となり、自殺したのは業務に起因する精神障害によるものであるとして、遺族が遺族補償不支給処分の取消しを求めた事案である。 東京地裁は、入社後6か月にして初めて担当を与えられた平均的な営業担当者にとっては過重な心理的負荷であり、労働者に発症した精神障害は、業務に内在ないし随伴する危険が現実化したものと認められるとして、労災を認定し遺族補償不支給処分を取り消した。 |
参照法条 | : | 労働者災害補償保険法7条 労働者災害補償保険法12条の2の2 労働者災害補償保険法16条 労働者災害補償保険法16条の6 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険/業務上・外認定/業務起因性 労災補償・労災保険/業務上・外認定/自殺 |
裁判年月日 | : | 2006年11月27日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成17行(ウ)243 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | 時報1957号152頁/タイムズ1237号249頁/労働判例935号44頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-業務起因性〕 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-自殺〕 イ 業務による心理的負荷の検討 一郎の発病に先立って次々に生じた業務上の心理的負荷を伴う一連の出来事は、前記一ないし三で認定したとおりであり、後記(ア)ないし(キ)に照らすと、総合食品卸売業者における新入社員として、入社後六か月にして初めて担当の取引先を与えられた平均的な営業担当者にとっては、過重な心理的負荷を伴う出来事であったと認めるのが相当である。〔中略〕 (キ) 小括 以上からすると、一郎の業務に伴う心理的負荷は、新人時代という人生における特別な時期において、人によっては経験することもあり得るという程度に強度のものと認めるべきであって、判断指針に照らしても、個々の出来事の評価を修正して、強度のものと評価するのが相当である。〔中略〕 オ 小括 以上の検討によれば、一郎の業務上の心理的負荷は、総合食品卸売業者における新入社員として、入社後六か月にして初めて担当の取引先を与えられた平均的な営業担当者を基準とすると、相当に強度のものであったということができ、他方で、一郎には業務外の心理的負荷や精神障害を発病させるような個体側要因も認められない。これらを総合考慮すると、一郎の精神障害(適応障害及びうつ病エピソード)発病は、業務による心理的負荷が、社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させる程度に過重であった結果発生したものというべきである。そうだとすると、一郎の上記精神障害は、業務に内在ないし随伴する危険が現実化したものとして、業務起因性があるものと認めるのが相当である。 (3) 本件自殺の業務起因性 上記(2)のとおり、遅くとも一二月中旬までに発病した一郎の精神障害(うつ病エピソード)は業務に起因するものと認められるところ、上記精神障害発症後間もなく引き起こされた本件自殺は、一郎の正常の認識及び行為選択能力が当該精神障害により著しく阻害されている状態で行われたものであるから(前記争いのない事実等(4))、本件自殺は「故意」の自殺ではないと推認すべきであり、業務起因性を認めるのが相当である。 |