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ID番号 : 08564
事件名 : 契約上の地位確認等請求事件
いわゆる事件名 : 魚沼中央自動車学校(湘南ドライビングスクール)事件
争点 : 閉校された自動車教習所指導員らが、新規開校する教習所に労働契約が承継されたと地位の確認等を求めた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 : A社経営の自動車教習所B校を閉校し、被告Y自動車学校がC校を開校するに当たり、〔1〕AとYとの間で、B校閉校時までにYがAの労働契約を承継する旨の合意があった、〔2〕Yと指導員Xらとの間で、B校閉校時までにB校と同一の労働条件で指導員らB校の教習指導員を雇用してC校にて勤務させる旨の合意があったとして、指導員らがYに対し、労働契約上の権利を有する地位確認とB校閉校後の賃金の支払を求めた事案である。 横浜地裁は、〔1〕労働契約を承継する旨の合意があったかについて、C校は新規に公認を取得していること等からして、Aから自動車教習所事業の営業譲渡を受けて開校したとまでは認められないとした上で、指導員・Y間の労働契約締結の有無については、Y代表者の発言により勤務場所をC校として将来雇用するとの労働契約の申込みをし、指導員らも嘆願書の提出、団体交渉での意思表示によって労働契約の申込みを受諾したものと認められるとして、Aとの労働契約が終了し業務が終了した時点で従業員を雇用するとの始期付き労働契約が成立したと解するのが相当として指導員の地位確認の請求を認容し、未払賃金についても一部認めた。
参照法条 : 商法245条
労働基準法2章
体系項目 : 労働契約(民事)/成立/成立
労働契約(民事)/労働契約の承継/営業譲渡
裁判年月日 : 2007年3月20日
裁判所名 : 横浜地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成16(ワ)3678
裁判結果 : 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 : 労働判例940号47頁
審級関係 :
評釈論文 : 大内伸哉・ジュリスト1353号139~143頁2008年4月1日
判決理由 : 〔労働契約(民事)-成立-成立〕
〔労働契約(民事)-労働契約の承継-営業譲渡〕
 2 争点(1)(被告と訴外会社の間の労働契約承継の有無)について 〔中略〕   (2) 上記(1)のとおり,訴外会社は,秦野校開校にあたり,被告に対して人的・物的に緊密な協力関係にあったことは認められるものの,秦野校は,公安委員会に対して新たに自動車教習所設置の届出をして道路交通法に従った手続により新規に公認を取得していること,自動車教習所にとって最も重要な営業用財産である教習コース,校舎及び教習車は訴外会社以外から取得していること,教習指導員24名中11名は訴外会社以外から採用していることからすれば,被告は,訴外会社から自動車教習所事業の営業譲渡を受けて秦野校を開校したとまでは認められない。  また,湘南校の従業員の秦野校における勤務形態も,Dから個別に打診を受けて秦野校の管理者となったKは当初から被告の従業員として採用されたと推認されるが,平成15年6月に秦野校に移った5名の従業員は少なくとも当初は訴外会社からの出向扱いであったり,平成16年6月に秦野校に移ったH とF2は被告に新規採用された扱いになっているなど,湘南校の元従業員の秦野校における待遇等は一律とは認め難い上,次郎やJは,湘南校の従業員全員を秦野校へ連れて行くと発言していた時であっても,訴外会社の労働条件をそのまま引き継ぐと発言したことはないなどの事情も認められる。   (3) これらの事実を総合考慮すれば,秦野校開校前に,被告と訴外会社との間で,訴外会社と従業員との間の労働契約を包括的に被告が承継するとの契約が締結されていたとは未だ認めることはできない。  3 争点(2)(被告と原告らの間の労働契約締結の有無)について 〔中略〕   (4) そこで,原告らと被告の間で成立した労働契約の効力発生時期について検討するに,被告は,前記(2)のとおり訴外会社の代表者である次郎を通じて訴外会社の従業員に対して労働契約の申込みをしていることからすれば,訴外会社が従業員を秦野校へ出向させるなど訴外会社の明示の承諾があったと認められる場合を除き,被告も原告らも訴外会社と従業員との間の労働契約継続中に当該従業員が秦野校で就労することを予定してないと解するのが当事者の合理的意思に沿うというべきであるから,訴外会社との労働契約が終了し訴外会社での業務が終了した時点で当該従業員を雇用するとの始期付き労働契約が成立したと解するのが相当である。  そして,訴外会社は,平成17年2月25日をもって原告らを解雇し,同日をもって原告らと訴外会社との間の労働契約が終了したことは明らかであるから,遅くとも同日には原告らと被告との間の労働契約の効力が発生したと認められる。  4 争点(3)(未払賃金額)について 〔中略〕   (3) 訴外会社における平成17年2月25日時点の原告Aの基本給は月額35万7200円,原告Bの基本給は月額33万7700円,原告Cの基本給は月額36万9600円であり〔中略〕,被告の給与規程によれば,その支払期日は前月21日から当月20日までの賃金を当月28日に支給することと定めているから〔中略〕,被告は,原告らに対し,平成17年2月25日から原告らが請求している同年12月20日までの賃金につき,別紙一覧表(4)の支払期日欄記載の各日に賃金欄記載の各金員を支払うべき義務があるというべきである。  なお,原告Aは577万8668円,原告Bは701万9115円,原告Cは577万9669円の限度で未払賃金を請求しているので,被告は,原告らに対し,別紙一覧表(5)の合計欄記載の各金員及び賃金欄に記載された各金員について当該支払期日の翌日から支払済みまで商法所定の年6パーセントの割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。