ID番号 | : | 08647 |
事件名 | : | 配転無効確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 東日本電信電話事件 |
争点 | : | 電信電話会社従業員が配転命令を違法・無効として新職務従事義務の不存在確認等を求めた事案(労働者敗訴) |
事案概要 | : | 電信電話会社の従業員らが、勤務事業所及び職務を変更する旨の配置転換命令を違法・無効であるとして、命令された職務に従事する義務の不存在確認、不法行為による慰謝料の支払等を求めた控訴審である。 第一審東京地裁は、従業員らについてそれぞれ配転の必要性があったか否かを検討し、結局全員について必要性を認め、従業員らの請求をいずれも棄却した。これに対し第二審東京高裁は、本件においては、会社を取り巻く経営環境悪化のために業績が急激に悪化したという背景があり、また退職・再雇用の選択肢もあったのに本社に残ることを選択しており、強制の事実を窺うことはできないとして、配転は社員の勤務意欲を低下させないために労働力配置の効率化及び企業運営の円滑化等の見地からみてやむを得ない措置であり、従業員らに与える不利益は通常甘受すべき程度の転勤に伴う不利益にとどまり、勤務命令権の濫用に当たらないと判断して、請求をすべて棄却した(控訴人のうち1名については訴えの利益を欠くとして却下した。)。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法709条 民事訴訟法134条 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣/配転命令権の濫用/配転命令権の濫用 |
裁判年月日 | : | 2008年8月28日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成19(ネ)4448 |
裁判結果 | : | 一部変更、一部棄却 |
出典 | : | 労経速報2014号10頁 |
審級関係 | : | 一審/東京地/平19. 7.25/平成15年(ワ)23800号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用-配転命令権の濫用〕 また、控訴人らは、電電公社当時各地の地方局単位で、通称B採として採用された者は、局をまたいで異動することはないとの合意があったなどと主張するが、当時は本社(総裁)の委任を受けた各局長が採用手続を行っていたものの、採用方針、採用人員、労働条件その他の契約内容は本社が定めるので、各局長に裁量権などなく当然採用者は全国異動対象者との前提であったこと(人証(略)及び弁論の全趣旨)に照らせば、採用することはできない。〔中略〕 満了型を選択した社員で移行対象業務に従事していた約300人のうち約130人が首都圏へ異動となったにすぎないこと(人証略)から満了型が遠隔地・異職種配転を必然的に伴うということができない。また、非移行対象者の四百数十人が退職・再雇用型を選択したこと(控訴人E)及び首都圏で移行対象業務に従事していた者の多数が退職・再雇用を選択したこと(人証略)にアンケート結果(書証略)を併せ考えると、強制の事実をうがうことはできない。さらに、退職・再雇用と満了型は遜色ないこと(証拠(略)、弁論の全趣旨)に照らせば、控訴人らの主張は採用することができない。〔中略〕 これを本件についてみるに、既に説示したように、被控訴人を取り巻く経営環境の変化と競争激化による収益の低下の中ではIP・ブロードバンド事業を拡大するため社員の雇用形態を変化させたり、市場性や収益力の高い首都圏エリアで情報PTや販売PTを新設してそこに人員を集中させる本件改革の実施はやむを得ないというべきである。しかも、本件改革は、社員の圧倒的多数から組織されるNTT労組がその実施を承諾し、かつ、控訴人ら以外の圧倒的多数の中高年齢層の社員が賃金の少なからぬ減額をもたらす退職・再雇用型を選択して退職に応じてOS子会社へ転籍し、賃金減額の不利益を甘受していたのに、満了型を選択して被控訴人にとどまった控訴人らを地元の新会社(OS子会社)に出向させるというのでは、退職・再雇用型を選択して退職に応じてOS子会社へ転籍し、賃金減額の不利益を甘受している社員との関係で不公平感を醸成しかねないものであった。そして、そもそも上記のような被控訴人の経営環境の変化自体が我が国における電気通信事業政策の変化や技術革新やユーザーである国民の情報通信に対する要望の多様化といった被控訴人において制御不可能な事情によるものであったのである。その上、その変化は好転を望めない構造的なものであった。以上のほかに、控訴人らは合理的な人選基準(情報PT基準、販売PT基準)に依拠して人選されたこと(もっとも、同基準を充足しない者も一部ある)など既に説示の事情にかんがみれば、社員の勤務意欲を低下させないために労働力配置の効率化及び企業運営の円滑化等の見地からみて、本件命令はやむを得ない措置であったというべきである。結局、本件命令には業務上の必要性が優に存したものということができ、他の不当な動機・目的をもってされたものと評することはできず、また、控訴人らに与える不利益は通常甘受すべき程度の転勤に伴う不利益にとどまるというべきであるから、本件命令は、勤務命令権の濫用に当たらないと解するのが相当である。〔中略〕 第4 結論 以上によれば、控訴人Fが求める労働義務がないことの確認請求は訴えの利益を欠くので同部分に係る訴えを却下すべきであるが、その余の請求はすべて理由がない。 |