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ID番号 : 08663
事件名 : 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 : 日本瓦斯(日本瓦斯運輸整備)事件
争点 : 出向を命ぜられ、休職を3度更新した後退職扱いとされた従業員が地位確認等を請求した事案(労働者敗訴)
事案概要 : 体調不良を理由に瓦斯会社Y1から子会社Aを経て子会社Y2への出向を命ぜられ、休職を3度更新した後退職扱いとされた従業員Xが、Y1に対して雇用契約上の地位確認を、Y1・Y2に対して休職期間中の賃金を、Y1・Y2の役員に対しては不法行為による損害賠償をそれぞれ請求した事案である。 東京地裁は、休職は出向元、出向先双方の就業規則の休職規定を適用し、所定の休職事由が存在するとしてなされたもので有効であり、休職期間の満了後再度休職を命ずるか否かは権利の濫用に当たらない限り使用者の裁量にゆだねられており、診断書を提出しなかったことに対し、Y1が4度目の更新を行わなかった点に不当な点はなく退職の効力が発生するとした。また、休職期間中を原則として減額又は不支給とするY1の就業規則及び休職6か月目以降を無給とするY1の就業規則に基づきY2が休職6か月目以降の賃金を支払わなかったことに何ら不当な点はなく、両社の役員にも何ら不当な点はないとして、Xの請求をいずれも棄却した。
参照法条 : 労働基準法2章
体系項目 : 配転・出向・転籍・派遣/出向中の労働関係/出向中の労働関係
休職/休職の終了・満了/休職の終了・満了
休職/傷病休職/傷病休職
裁判年月日 : 2007年3月30日
裁判所名 : 東京地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成17(ワ)26131
裁判結果 : 棄却(控訴)
出典 : 労働判例942号52頁
労経速報1974号20頁
審級関係 : 控訴審/東京高/平19. 9.11/平成19年(ネ)2507号
評釈論文 : 池田悠・ジュリスト1356号231~234頁2008年5月1日
判決理由 : 〔配転・出向・転籍・派遣-出向中の労働関係-出向中の労働関係〕
〔休職-休職の終了・満了-休職の終了・満了〕
〔休職-傷病休職-傷病休職〕
 被告らは,被告Y1社の就業規則52条6号,46条1項4号により休職期間の満了した平成17年8月15日の経過により退職の効力が発生した旨主張する。そして,本件休職については,就業規則45条4号によるものであると主張するところ,本件休職は,第1回目が平成16年11月16日から同年12月25日までとするものであり,以後発令が繰り返されて最後に発令されたのが,平成17年6月23日付けの同年8月15日までとするものであるから,結局のところ本件休職がいずれも有効にされたものである限り,その最後の期間が満了した時に退職の効力が発生することが就業規則上明らかである。〔中略〕
原告は,平成16年9月から同年11月にかけて体調不良により有給休暇を取ることが多くなったため,被告Y2社は原告に診断書の提出を求めたところ,原告から自律神経失調症のため1か月の休養加療を必要とする内容の診断書が提出されたため,被告Y2社は,原告に対して休職を命ずる必要があると判断し,本件休職が発令されるに至ったが,その後休職の辞令に記載された期間が満了する都度同様の内容の診断書が提出されたため,以後3回にわたり休職発令が繰り返されたというのである。そうすると,平成16年11月16日の時点で被告Y1社の就業規則45条4号の定める「特別の事情があって休職させることを適当」とする事情及び被告Y2社の就業規則49条1号の定める「身体または精神の衰弱故障により業務に堪えない」とする事情が存在したため,被告Y1社については就業規則46条1項4号,被告Y2社については就業規則50条1項1号により,期間を同年12月25日までとして休職を発令し,かつ同事情はその後3回にわたる休職発令の各時点においても同様に存在したため,上記各条項を適用してその都度期間を定めて休職を発令したと認められるから,本件休職はいずれも有効になされたものと認められる。〔中略〕
原告は提出を求められた診断書を提出せず,体調については以前と変わらない旨回答したというのであるから,被告Y1社及び被告Y2社が平成17年8月15日以降休職期間を延長しなかったことに何ら不当な点はなく,被告Y1社の就業規則52条6号により,同日の経過をもって退職の効力が発生したと言うべきである。〔中略〕
休職期間が満了した後,再度の休職を命ずるか否かは使用者の裁量に委ねられており,それが権利の濫用にわたらない限り適法であると解すべきところ,前記認定事実によれば,被告Y1社は,3度にわたり休職を更新し,その期間も9か月が経過しているにもかかわらず,原告の体調には一向に改善がみられなかったために再度の更新はしないこととしたのであり,私傷病休職(45条1号)の際の休職期間が9か月とされている(46条1項1号ニ)ことにも照らすと,平成17年8月15日の時点で休職期間を更に延長しなかったことに何ら不当な点はないというべきである。〔中略〕
被告Y1社の就業規則48条1項は,休職期間中の賃金について,「給与規程の定めるところにより,原則として給与を減額し,又は支給しない」と定め(被告Y2社の就業規則51条1項もほぼ同旨),被告Y2社の給与規程16条によれば,勤続1年以上の者について1か月目は90パーセント,2か月目以降5か月目までは80パーセントを支給し,6か月目以降は無給とされるから(乙2),被告Y1社が原告に対して休職6か月目に相当する平成17年5月分以降の賃金を支払わなかったことに何ら不当な点はない。〔中略〕
 原告が平成17年8月15日の経過をもって退職していることは前記のとおりであるから,その後の賃金請求権は存在しない。〔中略〕
被告Y1社及び被告Y2社の人事上の措置に何ら不当な点はないから,それぞれの代表取締役又は取締役としてこれを決定又は放置したことを理由として被告Y3,被告Y4及び被告Y5に不法行為が成立する余地はなく,また,被告Y5について原告の主張する不法行為事実については,これを認めるに足りる証拠がない。〔中略〕
 本件休職及び原告の退職に至る経緯について,両被告の措置に何ら不当な点はないことは前記のとおりであり,これらに関し両被告に不法行為が成立する余地はなく,また被告Y3,被告Y4及び被告Y5に不法行為が成立しないことは上記のとおりであり,被告Y1社及び被告Y2社についてこれらを放置したことを理由とする不法行為も成立する余地はない。