ID番号 | : | 08711 |
事件名 | : | 未払賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | エイテイズ事件 |
争点 | : | 衣料品会社を退職した元技術課課長が時間外、休日及び深夜労働の割増賃金を求めた事案(元従業員勝訴) |
事案概要 | : | 衣料品及びスポーツ用品のデザイン、製造、加工、販売等を業とする会社Yに入社し、ユニフォームのプリント加工等の業務に従事し生産統括本部の技術課課長に就任した後、休業し、退職した元従業員Xが、時間外、休日及び深夜労働の割増賃金の支払を求めた事案である。 神戸地裁尼崎支部は、Xが労働基準法41条2号にいう管理監督者に該当するか否かについて、Xは現場のいわば職長という立場にすぎず、その具体的な職務内容、権限及び責任などに照らし、Xが管理監督者であるとすることはできないと認定した。そして、割増賃金の金額について、就業規則が定める1週48時間労働の規定はそれ自体無効であるから労基法に定める40時間を超える部分の労働は時間外労働であると評価し、地域手当も除外されない等と判断して、Yに支払を命じた。 |
参照法条 | : | 労働基準法41条2項 労働基準法93条 労働基準法13条 労働基準法32条1項 労働基準法37条 |
体系項目 | : | 労働時間(民事)/労働時間・休憩・休日の適用除外/管理監督者 労働時間(民事)/労働時間の通算/労働時間の通算 労働時間(民事)/法内残業/割増手当 賃金(民事)/賃金請求権の発生/労基法違反の労働時間と賃金額 |
裁判年月日 | : | 2008年3月27日 |
裁判所名 | : | 神戸地尼崎支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成19(ワ)389 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴後和解) |
出典 | : | 労働判例968号94頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働時間(民事)-労働時間・休憩・休日の適用除外-管理監督者〕 〔労働時間(民事)-労働時間の通算-労働時間の通算〕 〔労働時間(民事)-法内残業-割増手当〕 〔賃金(民事)-賃金請求権の発生-労基法違反の労働時間と賃金額〕 原告が労働基準法41条2号において時間外、休日及び深夜の割増賃金に関する規定の適用を除外されている管理監督者であることは、被告が立証責任を負う抗弁であるところ、次に述べるとおり、これを認めるに足りる証拠はない。〔中略〕 原告は現場のいわば職長という立場にすぎず、その具体的な職務内容、権限及び責任などに照らし、原告が管理監督者であるとすることはできない。〔中略〕 本件においては、原告と被告との間で「労働契約書」という文書が取り交わされたことを認めるに足りる証拠はない。また、乙第2号証の1ないし3、第3号証、検証の結果、弁論の全趣旨によると、被告においては、適法に制定された就業規則が存在すること、被告の賃金規程はこの就業規則で引用されており、その一部となっていることが認められる。 したがって、労働基準法93条により、原告と被告との間の労働契約は、就業規則・賃金規程で定める基準によるということができる。ただし、同法13条により、これらが労働基準法で定める基準に達しない場合には、その部分については無効となり、この場合には、無効となった部分は同法が定める基準によることとなる。〔中略〕 上記就業規則・賃金規程の定めのうち、次の部分は労働基準法所定の基準に達しないため無効である。〔中略〕 被告の就業規則6条の定めのうちこれに反する部分は無効であり、労働基準法所定の基準によることとなる。〔中略〕 被告の就業規則16条、賃金規程9条のうちこれに反する部分(休日労働、休日労働と深夜労働が重なるとき)は無効であり、上記基準によることとなる。〔中略〕 被告の賃金規程においては、割増賃金の基礎となる賃金は基本給、役付手当、職能手当の和である旨を規定する。 そして、乙第7号証によると、原告が受け取っていた賃金の中には「地域手当」が含まれていることが認められ、これは労働基準法、同法施行規則により、割増賃金の基礎となる賃金から除外することが認められていないから、上記賃金規程に「地域手当」が含まれていない点は無効であり、これも割増賃金の基礎となる賃金に含まれる。 エ なお、被告の就業規則17条は、管理監督者であっても深夜労働の割増賃金に関する適用除外を行わない旨を定める。そして、これは、労働基準法の定めとは異なるが、同法の定めと比較して労働者に有利な変更であるから、同法13条の適用はなく、有効である。 したがって、争点1(管理監督者)に関する被告の主張を前提とした場合であっても、被告は、原告に対し、深夜労働の割増賃金を支払うべき義務を負う。〔中略〕 イ 平成17年3月分から5月分まで〔中略〕 この期間の時間外手当は96万4699円(円未満切捨て。以下同じ。)、深夜割増手当は2万9928円、以上の合計は99万4627円である。〔中略〕 ウ 平成17年6月分〔中略〕 この期間の時間外手当は53万9871円、休日手当は4万4763円、深夜割増手当は3万2290円、以上の合計は61万6924円である。〔中略〕 エ 平成17年7月分から平成18年6月分まで〔中略〕 この期間の時間外手当は416万5923円、休日手当は30万2005円、深夜割増手当は19万4350円、以上の合計は466万2278円である。〔中略〕 オ 平成18年7月分〔中略〕 この期間の時間外手当は16万0508円、休日手当は1万7798円、深夜割増手当は1万1015円、以上の合計は18万9321円である。〔中略〕 カ まとめ そして、イからオまでの合計は646万3150円である。 また、これに対する平成18年7月26日から同年12月31日まで(159日間)商事法定利率年6分の割合による遅延損害金は16万8927円である。〔中略〕 さらに、原告の時間外労働、休日労働、深夜労働の時間数は非常に大きく、前記認定判示のとおり、そのほとんどが現場でのプリント作業に費やされている。また、被告は、タイムカードを通じて原告のこのような労働状態を認識していたところ、被告が、このような状態を改善しようとしたり、原告の健康管理に意を払ったりしたことを認めるに足りる証拠はない。 そして、これらの事情に照らすと、原告が請求する労働基準法114条所定の付加金は、上記認定金額の646万3150円の限度で理由があるというべきである。 |