ID番号 | : | 08724 |
事件名 | : | 退職金請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | パナホーム事件 |
争点 | : | 営業譲渡や吸収合併により、その都度地位を承継された従業員が、退職金の始期を最初の入社時とすること等を請求した事案(従業員敗訴) |
事案概要 | : | 住宅会社AがB社に事業承継され、最後にY社に合併された場合において、引き続き雇用されていた従業員Xが、Yの提案した「特別転進支援制度」に応募してYを退職したとして、Yに規定される通常退職金及び転進支援金等の支払(ただし既に受領している金員との差額分)を求めた事案の控訴審判決である。 第一審の東京地裁は、営業譲渡の際に雇用契約も承継され、未だ退職してはいなかったとして退職金の対象期間をA社入社時に遡ると認定したが、その場合既払金を控除すると残額はなく、また転進支援金についてはX自身が内容を認識・承認した上で本件制度適用の申込みをしており、その内容どおりに支払われている以上に支援金を請求することはできないなどとして、Xの請求をすべて棄却した。これに対しXが控訴。 第二審の東京高裁は、AからBへ営業譲渡がなされたからといって、雇用契約が包括承継されたということはできず、また勤続期間を通算して退職金を支給する旨の合意があったとも認められないとして、A社入社時から通算してY社の規定を適用して算定すべきとするXの請求を棄却、また転進支援金については第一審の判断を維持して、控訴をすべて棄却した。 |
参照法条 | : | 民法625条1項 労働基準法2章 労働基準法9章 |
体系項目 | : | 労働契約(民事)/労働契約の承継/営業譲渡 賃金(民事)/退職金/退職金と損害賠償 賃金(民事)/退職金/退職金請求権および支給規程の解釈・計算 |
裁判年月日 | : | 2008年6月26日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成20(ネ)608 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例970号32頁 |
審級関係 | : | 第一審/東京地/平19.12.17/平成18年(ワ)12726号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約(民事)-労働契約の承継-営業譲渡〕 〔賃金(民事)-退職金-退職金と損害賠償〕 〔賃金(民事)-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 本件においては、上記営業譲渡に際して、パナホームの従業員の転籍に際しては、平成11年9月末日でパナホーム京葉との雇用契約を合意解除し、同年10月1日付けで千葉パナホームと雇用契約を締結するものとされ、控訴人もまた上記内容に同意する旨の本件承諾書を提出していることは前記認定のとおりであるから、上記営業譲渡により、パナホーム京葉と控訴人との間の雇用契約が千葉パナホームに包括承継されたということはできない。〔中略〕 控訴人は一旦は他の従業員と同様、転籍に際して退職金の支給を受けず、千葉パナホームを退職するときにパナホーム京葉における勤続年数と千葉パナホームにおけるそれとを通算して、千葉パナホームの退職給与規程により千葉パナホームから退職金の支給を受けるとの方式を選択したものの、その後翻意して、パナホーム京葉の退職金基準に従い高額の退職金を受領する方式を選択し直したものと認めるのが相当である。〔中略〕 本件確認証自体は功労金の支払を約する書面でないばかりか、A社長は原審において、控訴人に対する取締役の報酬支払につきC専務との間で何らかの補償をすべきであるとの話をしたにとどまる旨を証言するところである。また、控訴人が支給を受けた上記433万0900円が上記主張のとおり未払であった取締役報酬であるとすると、これをパナホーム京葉の退職金支給基準により計算した退職金額と同額にする必要は乏しいはずである上、そもそも、控訴人が受給してきた給与額には取締役報酬が含まれていなかったのか否か、支払われるべき取締役報酬がどのように定められ、またその数額がいか程であったのかなどについての的確な立証はなく、また、パナホーム京葉の経理状態が不良であったことは明らかであり、上記金員の支給をするに当たり、被控訴人において取締役に功労金あるいは補償金を支給する旨の株主総会決議もされていない(弁論の全趣旨)。そうすると、控訴人が支給を受けた上記433万0900円は、むしろパナホーム京葉を退職するに際し、同社の退職金支給基準に従って支給された退職金であると解する方が素直であって、同金員をもって支払を受けていなかった役員報酬を補填する功労金あるいは補償金であると解するのは困難である〔中略〕 そうすると、上記(ア)の事情は、控訴人パナホーム京葉及び千葉パナホーム間において、控訴人の退職金算定の基礎となる勤続年数につき、控訴人の両社における勤続期間を通算して算出する旨の合意をしたことを推認させるものではなく、上記ア(ウ)の認定を左右するものではない。 ウ そして、その他には、控訴人、パナホーム京葉及び千葉パナホーム間において控訴人の勤続期間を通算して算出する旨の合意の成立を認めるに足りる証拠はない。 したがって、その余の点につき判断するまでもなく、争点1に係る控訴人の主張は理由がない。 3 争点2について 争点2についての判断は、原判決中の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。 4 結論 以上より控訴人の本訴請求は理由がないのでこれを棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 |