ID番号 | : | 08821 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 学校法人甲音楽大学事件 |
争点 | : | 音楽大学の准教授がハラスメントを理由とする懲戒解雇の無効と地位確認・慰謝料等を求めた事案(労働者敗訴) |
事案概要 | : | 学校法人の設置する音楽大学Yの准教授Xが、学生に対して行ったハラスメントを理由とする懲戒解雇を無効として、雇用契約上の地位確認と賃金・遅延損害金及び慰謝料の支払を求めた事案である。 東京地裁は、Xの学生に対するハラスメント行為の存在を認定し、それらは就業規則が定める懲戒事由に該当し、その態様は極めて悪質である上、全く反省の態度を示していないとしたうえで、Xに対する弁明の機会の付与等、懲戒解雇に至る学校法人側の一連の手続は適正に担保されているということができるとして懲戒解雇の有効と学校法人側に不法行為のないことを認め、Xの請求をいずれも棄却した。 |
参照法条 | : | 労働基準法19条 労働契約法15条 労働契約法16条 民法709条 民法710条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇
/懲戒権の濫用
/懲戒権の濫用 懲戒・懲戒解雇 /懲戒事由 /服務規律違反 懲戒・懲戒解雇 /懲戒手続 /懲戒手続 |
裁判年月日 | : | 2011年7月28日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成22(ワ)25979 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働経済判例速報2123号10頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇‐懲戒権の濫用‐懲戒権の濫用〕 〔懲戒・懲戒解雇‐懲戒事由‐服務規律違反〕 〔懲戒・懲戒解雇‐懲戒手続‐懲戒手続〕 1 争点(1)(本件懲戒解雇の効力)について〔中略〕 (4) まとめ 原告のCに対する本件〈1〉ないし〈3〉の各行為は、就業規則69条②号及び⑪号に該当し、その態様は極めて悪質である上、原告は全く反省の態度を示していない(本件〈4〉の行為を認定しなくとも、懲戒解雇事由として十分であるといえる。)。そして、原告に対する弁明の機会の付与等、本件懲戒解雇に至る被告における一連の手続は、適正に経由されているということができる。 したがって、本件懲戒解雇は、有効であるということができるから、原告の地位確認請求及び未払賃金請求はいずれも理由がない。 2 争点(2)(本件不法行為の成否)について 上記1に判示したところによれば、本件懲戒解雇は、原告の本件〈1〉ないし〈3〉の各行為を懲戒事由として、適正な手続を経由してされたものであって、もとより有効であるから、本件不法行為は成立しない。 したがって、原告の本件不法行為請求は理由がない。〔中略〕 (別紙) 平成22年6月1日 音楽学部准教授 A殿 学校法人甲音楽大学 理事長 B 懲戒処分通知書 当法人は、懲戒委員会の審議結果(これは、ハラスメント防止・対策委員会による事実調査、及びこれに基づく学長への報告、学長による音楽学部教授会への事実報告、及びこれに基づく理事会への報告、並びに理事会による懲戒委員会への諮問に基づき行われたものである。)に基づき、貴殿が下記各行為を行ったものと認めた。 下記各行為は当法人の教育方針に違反し、キャンパス等当法人の職場内の風紀秩序を著しく乱すとともに、当法人の名誉、信用を著しく傷つけるもの、もしくは、これらに準ずるものであること、下記各行為は、貴殿の教員としての身分を利用して行われたものであること、女子学生(当時)に対する性的行為は、合意の有無にかかわらず、教員として遵守すべき規範を大きく逸脱するもので到底許容できない。従って、当法人としては、貴殿の下記各行為の情状はきわめて重いものと判断せざるを得ない。 よって、当法人は、当法人就業規則第69条第②号及び第⑩号により、貴殿を平成22年6月1日付で懲戒解雇処分に付する。 記 〈1〉 貴殿は、平成21年11月4日から5日にかけて、群馬県内においてCを伴って演奏旅行をした際、同月4日に前橋市所在の東横イン・ホテルに宿泊したが、夕食後メールで貴殿の部屋にCを招き入れ、同日午後10時50分頃Cが自室に戻ろうとしたところ、背後からCを抱きしめ、次いでCを反転させてキスをした上、抵抗するCの意思を無視してその着衣を脱がせて性交に及んだ。 〈2〉 貴殿は、平成21年12月26日、冬期講習会の伴奏をしていたCを夕食に誘って、Cを自車に乗せて移動したが、その際Cの意思を確認することもなくいきなりラブホテル駐車場に乗り付けて、Cに情交関係を持つよう迫ったが、Cがこれを拒否したため、情交関係を持つことができなかった。 〈3〉 貴殿は、平成22年3月30日午後4時30分頃、埼玉県○○市の貴殿の自宅にCを呼んでオペラの練習をした後、Cにキスをした上でCの着衣の中に手を入れてCの体を触るなどして、Cに情交関係を迫ったが、Cがこれを拒否したため、情交関係を持つことができなかった。 〈4〉 貴殿は、平成21年秋ころから平成22年3月頃までの間、Cを自車に乗車させ、Cの自宅に送る際、複数回にわたりCにキスをした。 以上 |