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ID番号 : 08868
事件名 : 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 :
争点 : 電子機器製造・販売会社の従業員が再雇用契約の成立を主張して地位確認、賃金等を請求した事案(労働者勝訴)
事案概要 : 電子制御機器及び計測機器の製造・販売会社Yで、定年に達した後引き続き1年間の嘱託雇用契約により雇用されていた従業員Xが、Yに対し同契約終了後の継続雇用を求めたにもかかわらず拒絶されたため、再雇用契約の成立を主張して地位確認、賃金支払い等を求めた事案の上告審である。 第一審大阪地裁は、会社が定めた継続雇用基準は無効であるとする旨のXの主張を斥けつつ、基準を満たしているかの評価に争いがあるときには一定の評価を基礎づける事実及びその評価を障害する事実が、それぞれ労働者及び使用者の主張立証すべき事実となるとした上で、Yの評価には誤りがあったとして、所定労働時間30時間内とする再雇用契約の成立を認めた。第二審大阪高裁も、不採用はYの権利濫用であるとした上で、月額給与に年6分の遅延損害金を付加する部分のみ変更してYの控訴を棄却した。これに対してYが上告。 最高裁第一小法廷は、Xの在職中の業務実態及び業務能力に係る査定等の内容を本件規程所定の方法で点数化すると総点数が1点となり、本件規程所定の継続雇用基準を満たすものであったことから、規程に基づく再雇用をすることなく嘱託雇用契約の終期の到来によりYの雇用が終了したものとすることは、他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない以上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものとして、Yが満64歳に達する平成24年1月20日までの雇用関係の存続を認め、賃金を一部日割り方式に更正した以外は全て控訴審判決を維持し、上告を棄却した。
参照法条 : 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条2項
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条1項2号
高年齢者等の雇用の安定等に関する法律附則4条1項
労働契約法
体系項目 : 解雇(民事) /短期労働契約の更新拒否(雇止め) /短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 : 2012年11月29日
裁判所名 : 最高一小
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成23(受)1107
裁判結果 : 上告棄却
出典 : 裁判所時報1568号6頁 裁判所ウェブサイト掲載判例
審級関係 : 控訴審/大阪高平成23.3.25/平成22年(ネ)第3123号/平成23年(ネ)第92号
一審/大阪地平成22.9.30/平成21年(ワ)第3802号
評釈論文 :
判決理由 : 〔解雇(民事)‐短期労働契約の更新拒否(雇止め)‐短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 法は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進等の措置を総合的に講じ、もって高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図ること等を目的とする(法1条)ものであるところ、法附則4条1項により平成22年4月1日から同25年3月31日までの期間において読み替えて適用される法9条1項は、64歳未満の定年の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の64歳までの安定した雇用を確保するため、当該定年の引上げ、継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度)の導入又は当該定年の定めの廃止のいずれかをしなければならない旨を定め、同条2項は、事業主が、当該事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がない場合において、労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用基準を定めて当該基準に基づく制度を導入したときは、継続雇用制度の導入をしたものとみなす旨を定めている。
 上告人は、法9条2項に基づき、本社工場の従業員の過半数を代表する者との書面による協定により、継続雇用基準を含むものとして本件規程を定めて従業員に周知したことによって、同条1項2号所定の継続雇用制度を導入したものとみなされるところ、期限の定めのない雇用契約及び定年後の嘱託雇用契約により上告人に雇用されていた被上告人は、在職中の業務実態及び業務能力に係る査定等の内容を本件規程所定の方法で点数化すると総点数が1点となり、本件規程所定の継続雇用基準を満たすものであったから、被上告人において嘱託雇用契約の終了後も雇用が継続されるものと期待することには合理的な理由があると認められる一方、上告人において被上告人につき上記の継続雇用基準を満たしていないものとして本件規程に基づく再雇用をすることなく嘱託雇用契約の終期の到来により被上告人の雇用が終了したものとすることは、他にこれをやむを得ないものとみるべき特段の事情もうかがわれない以上、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないものといわざるを得ない。したがって、本件の前記事実関係等の下においては、前記の法の趣旨等に鑑み、上告人と被上告人との間に、嘱託雇用契約の終了後も本件規程に基づき再雇用されたのと同様の雇用関係が存続しているものとみるのが相当であり、その期限や賃金、労働時間等の労働条件については本件規程の定めに従うことになるものと解される(最高裁昭和45年(オ)第1175号同49年7月22日第一小法廷判決・民集28巻5号927頁、最高裁昭和56年(オ)第225号同61年12月4日第一小法廷判決・裁判集民事149号209頁参照)。そして、本件規程によれば、被上告人の再雇用後の労働時間は週30時間以内とされることになるところ、被上告人について再雇用後の労働時間が週30時間未満となるとみるべき事情はうかがわれないから、上告人と被上告人との間の上記雇用関係における労働時間は週30時間となるものと解するのが相当である。
 原審の前記判断は、以上と同旨をいうものとして、是認することができる。論旨は採用することができない。
 第3 なお、原審の引用する第1審判決の説示等によれば、原判決は、上告人の予備的賃金請求につき、被上告人が満64歳に達する日であって本件規程に基づく雇用関係が終了する平成24年1月18日より後に原判決が確定する場合には、同日までの賃金(平成23年12月21日から同24年1月20日までの月額賃金の計算期間においては19万9293円を日割計算した18万6435円)及びその遅延損害金の支払を命ずる限度でその請求を認容すべきものとする趣旨であることは明らかであるから、民訴法257条1項により、原判決主文第1項後段を主文第2項のとおり更正する。