ID番号 | : | 08910 |
事件名 | : | 地位確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | パナソニックエコシステムズ(派遣労働)事件 |
争点 | : | 派遣先の空調機器等関連会社を相手取り、派遣労働者が雇止めの無効を求めた事案(労働者一部勝訴) |
事案概要 | : | 空調機器、環境機器等製造・販売会社Yに派遣された後雇止めされた派遣労働者Xらが、実質的にYとの間で雇用契約が成立していたとしてYを相手取り、地位確認、賃金及び不法行為による損害賠償金の支払いを求めた事案である。 第一審名古屋地裁は、XY間には黙示の契約が成立していたと認めなかったものの、派遣先会社が派遣労働者に正社員を代替人材として育成させ、代替人材が得られることや派遣料金の高さを理由に突然に派遣切りをするような仕打ちは著しく信義にもとるものであり、ただでさえ不安定な地位にある派遣労働者としての勤労生活を著しく脅かすものであって、派遣先としての信義則違反の不法行為が成立するとして慰謝料の支払いを認め、その余の請求を棄却した。これに対してXY双方が控訴。第二審名古屋高裁も、XY間には黙示の契約が成立していたとは認められず、したがって解雇権の濫用も認められないと改めて判示し、派遣先としての信義則違反の不法行為のみ認め、本件各控訴をいずれも棄却した。 |
参照法条 | : | 労働者派遣法40条の2 労働者派遣法26条 労働者派遣法40条の4 職業安定法44条 民法90条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事)
/使用者
/派遣先会社 労働契約(民事) /労働契約上の権利義務 /使用者に対する労災以外の損害賠償請求 |
裁判年月日 | : | 2012年2月10日 |
裁判所名 | : | 名古屋高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成23(ネ)615 |
裁判結果 | : | 控訴棄却 |
出典 | : | 労働判例1054号76頁 |
審級関係 | : | 一審/名古屋地平成23.4.28/平成21年(ワ)第4374号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則(民事)‐使用者‐派遣先会社〕 しかし、前示(補正後の原判決書記載)の事実関係の下では、1審原告らからも、1審被告からも、明示的にも、黙示的にも、雇用契約の成立に向けた意思表示(申込み又は承諾)があったと認めるに足りないし、その他本件の全証拠を検討しても、これを認め得るような事情を示す証拠は見当たらない。 1審原告らの主張は、実質的には、労働者派遣法上の規制が潜脱された場合には、雇用契約の成立を擬制すべきであるとするものにほかならないというべきであるが、そのように解すべき法律上の根拠はないというべきであって、1審原告らが縷々主張するところは、いずれも独自の見解というほかはなく、採用することができない(最二小平成21年12月18日判決・民集63巻10号2754頁は、1審原告らの主張に係る法解釈を根拠付けるものとはいえない。なお、1審原告らがそれぞれ主張するところを踏まえても、前示〔補正後の原判決書記載〕の事実関係の下では、1審被告が派遣元〔1審原告X1については訴外共栄紙器及び訴外ホンダロジコム、1審原告X2については訴外スタッフサービス〕による採用や給与の額の決定に影響を与えたことは認められるにせよ、1審被告が採用に関与していたとか、給与等の額を事実上決定していたとまで直ちに認めることは困難である。)。 〔労働契約(民事)‐労働契約上の権利義務‐使用者に対する労災以外の損害賠償請求〕 3 1審被告の1審原告らに対する不法行為の成否について〔中略〕 ウ 原判決書74頁16行目の末尾の次に、行を改めて、以下を加える。 「 この点、1審被告は、訴外スタッフサービスと労働者派遣契約が終了したのは、1審原告X2の業務が終了したからにすぎない旨主張する。しかし、1審被告の上記主張は、1審原告X2が従事していた有圧換気扇の性能実験業務が35センチメートル及び40センチメートルの有圧換気扇に限られることを前提とするものであるところ、1審原告X2は、45センチメートル以上の有圧換気扇の性能実験業務にも関与していたことが認められるから(甲32、47、証人E、1審原告X2本人。なお、乙61は、上記の認定を妨げるものではない。)、上記主張は、その前提を欠くものであって、採用することができない。」 エ 原判決書77頁22行目から同頁23行目にかけての「道義上の説明責任をおよそ何ら果たそうとしなかったことを考え併せれば、」を「信義則上、1審被告が1審原告X2に対して負うと解すべき説明責任を何ら果たそうとしなかったことを考え併せれば(1審被告は、訴外スタッフサービスと労働者派遣契約が終了した理由や1審原告X2を雇用しない理由を説明する法的義務はない旨主張するが、上記説示したところによれば、1審被告の説明義務は、もはや単なる道義上のものではなく、法的義務であると認めるのが相当である。)、」と改める。 オ 原判決書78頁4行目の末尾の次に、行を改めて、以下を加える。 「 なお、1審被告は、その他にも縷々主張するが、同主張及び当審で提出された証拠を踏まえても、上記認定判断を覆すべきものとは認められない。 他方、1審原告X2は、不当解雇を認めないのは誤りであり、慰謝料額も低すぎる旨主張する。しかし、1審原告X2と1審被告との雇用契約の成立が認められないことは、既に説示したとおりであって、1審原告X2の不当解雇の主張はその前提を欠くものであり、また、前示(補正後の原判決書記載)の事実関係のもとでは、1審原告X2が縷々主張するところ及び当審で提出された証拠を踏まえても、慰謝料の額が低すぎるということはできない。」 |