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ID番号 : 08938
事件名 : 労働契約の地位確認等請求事件
いわゆる事件名 : 東亜外業(本訴)事件
争点 : 溶接鋼管製造会社が工場部門休止に際し希望退職に応じなかった者を解雇したことが争われた事案(労働者勝訴)
事案概要 : 大口径溶接鋼管製造等を業とするY社が、工場部門を経営不振により休止するに際し希望退職を募り、応じなかったXら28人を一斉解雇したことにつき、Xらが、解雇権濫用・無効として地位確認、未払賃金の支払等を求めるとともに、支払日の繰り上げを理由に解雇時の給与から差分を控除したことにつき返還を求めた事案である。 神戸地裁は、人員削減の必要性について、Yが毎年大幅な赤字を生み出している工場の休止に踏み切ったのもやむを得なかったものであり、そこには十分な合理性があるとしたが、解雇回避努力を真摯に尽くしたとは言い難く、人選の合理性については、あらかじめ客観的基準を策定して十分な協議を行った事実は認められず、対象者の大半が組合分会員であるなどの不自然さを勘案すると、選定理由は十分な客観的合理性を有するものではなかったとした。一方、説明義務は明らかに不十分とまではいえないとしたが、団体交渉拒否につき労働委員会から不当労働行為と認定されていることから、本件解雇に当たりYには労働組合法7条1号本文の不当労働行為意思を有していたと推認するのが相当とされ、結局本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないとして、Xらの請求を認めた(不適用者あり)。また、控除については清算時期未到来のため不当とした。
参照法条 : 労働基準法24条
労働組合法7条
労働契約法16条
体系項目 : 解雇(民事) /整理解雇 /整理解雇の必要性
解雇(民事) /整理解雇 /整理解雇の回避努力義務
解雇(民事) /整理解雇 /整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
解雇(民事) /整理解雇 /協議説得義務
賃金(民事) /賃金の支払い原則 /全額払・相殺
解雇(民事) /整理解雇 /整理解雇の要件
裁判年月日 : 2013年2月27日
裁判所名 : 神戸地
裁判形式 : 判決
事件番号 : 平成23(ワ)2298
裁判結果 : 一部認容、一部棄却
出典 : 労働判例1072号20頁
審級関係 :
評釈論文 :
判決理由 : 〔解雇(民事)‐整理解雇‐整理解雇の必要性〕
 2 争点1「人員削減の必要性」について〔中略〕
 (2) 前記1(2)の事実に以上認定の事実を併せ考慮すると、被告が毎年大幅な赤字を生み出している東播工場の休止に踏み切ったのもやむを得なかったというべきである。そうすると、それに伴って余剰人員が発生することになるから、適正な人員削減も必要であることは当然であるところ、被告は、次項に述べるように、既に208人の社外工を削減するなどの手だてを講じていることからすると、東播工場の本工たる従業員についても、これを削減することには十分な合理性があると認めるのが相当というべきである。
〔解雇(民事)‐整理解雇‐整理解雇の回避努力義務〕
 3 争点2「解雇回避の努力」について〔中略〕
 (3) 前記1(1)に説示したように、整理解雇が、当該労働者には帰責事由がないのに、使用者側の一方的都合により実施されるものであることにかんがみると、解雇回避努力は、可能な限り試みられるべきであるが、前号認定の事実及び事情からすると、被告がその回避努力を真摯に尽くしたとは言い難いというべきである。
〔解雇(民事)‐整理解雇‐整理解雇基準・被解雇者選定の合理性〕
 4 争点3「人選の合理性」について〔中略〕
 (3) 被告が、本件解雇を実施するに当たって取った手続は、前号の認定事実のとおりと認められるところ、前記前提となる事実等を併せても、被告があらかじめ客観的基準(年齢、勤続年数、役職、担当職務、資格、特別な貢献度、扶養親族の有無など)を策定し、原告らを含む従業員にこれを提示して十分な協議が行われた事実は認められない。
 (4) 以上の検討の結果に加えて、被告は、残留要員の選定基準として、乙13以外を提出する以外には、具体的な主張をしていないこと及び前記前提となる事実等(5)に記述したとおり、本件解雇の対象者28人中26人が分会員であるなどの不自然さを勘案すると、本件解雇の選定理由が十分な客観的合理性を有するものであったと認めることは困難というほかはないというべきである。
〔解雇(民事)‐整理解雇‐協議説得義務〕
 5 争点4「説明義務」について
 (1) 原告は、被告から決算報告書が提示されず、経営状況についての詳しい説明がされていないなどから、被告が十分な説明義務を果たしていないと主張する。
 しかしながら、仮に、被告から決算資料が提出されていたとしても、組合が容易に本件解雇に応じたとは思われない上、前記2(1)において説示したような被告の厳しい経営状況を勘案すると、本件においては、被告が行った程度の説明をもって明らかに不十分とまではいえないというべきである。
 (2) よって、本争点に係る原告らの主張は採用できない。
〔解雇(民事)‐整理解雇‐整理解雇の要件〕
 7 本件解雇の有効性についてのまとめ
 以上の検討の結果を総合すれば、本件解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であるとは認められないというべきである(労働契約法16条)。したがって、本件解雇は、解雇権を濫用したものとして無効と判断するのが相当である。
〔賃金(民事)‐賃金の支払い原則‐全額払・相殺〕
 11 争点9「本件控除の適法性」について
 第1項から第7項において説示したとおり、本件解雇は無効であるから、平成23年6月25日時点において、原告らとの労働契約は終了していない。
 したがって、仮に、被告の主張のとおり、原告らとの間において本件控除の合意が成立していたとしても、その清算時期は到来していないから、被告の本争点に係る主張は失当である。