ID番号 | : | 08973 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 学校法人錦城学園(高校非常勤講師)事件 |
争点 | : | 高校非常勤講師の雇止めの有効性と空き時間拘束に対する未払賃金の支給が争われた事案(非常勤講師敗訴) |
事案概要 | : | (1) 被告(Y)との間で有期雇用契約を締結し、Yの設置する高等学校において非常勤講師として勤務した原告(X)が、①雇止めされたことに対する地位確認等を求め、②担当授業の間に生じる空き時間につき、これが労働時間であると主張し、当該空き時間に対応する未払賃金等の支払を求め提訴したもの。 (2)東京地裁は、継続雇用も賃金未払いも認めずXの主張を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働契約法19条 労働基準法32条 |
体系項目 | : | 解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め) 労働時間(民事)/労働時間の概念/手待時間・不活動時間 労働時間(民事)/労働時間の概念/教職員の勤務時間 労働法の基本方針(民事)/労働者/教員 |
裁判年月日 | : | 2014年10月31日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成25年(ワ)20950号 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例1110号60頁 労働経済判例速報2232号18頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | 慶谷典之・労働法令通信2373号26~27頁2015年1月28日 |
判決理由 | : | 争点1(本件契約に労働契約法19条が適用されるか(同条2号該当性))について 有期雇用契約の契約期間の満了時における雇用契約更新に対する合理的期待(労働契約法19条2号)の有無を判断するに当たっては、最初の有期雇用契約の締結時から、雇止めされた有期雇用契約の満了時までのあらゆる事情を総合的に勘案すべきであるところ、具体的には、当該労働者の従事する業務の客観的内容、契約上の地位の性格、当事者の主観的態様、契約更新の際の状況及び同様の地位にある他の労働者の契約更新状況等の諸事情を勘案することが相当である。 本件学校の非常勤講師は、専任講師と同程度の授業負担を負っているとはいえ、飽くまでも臨時的な地位であることが前提であり、その結果、期待されている業務も、生徒指導等、授業以外で教員の指導力が求められる業務は除かれ、授業を行うことに限定されているということができる。 Xが、飽くまで臨時的な地位である非常勤講師として、実例がほぼ存在しないにも関わらず、4年を超えて勤務することができると期待するに値する合理的な事情があるとはいえない。 本件学校の非常勤講師に関する客観的な状況、及びXが認識していた具体的な事情に照らしても、Xが非常勤講師として5年目(更には6年目)の雇用継続を期待したことが合理的なものであったとはいうことができず、本件雇用契約は労働契約法19条2号に該当しない。 したがって、本件雇止めの合理性及び相当性(争点2)について判断するまでもなく、Xの、Yに対する雇用契約上の地位の確認請求(請求の趣旨1項)及び本件雇止め後の賃金及び賞与の支払請求(請求の趣旨2項)にはいずれも理由がない。 争点3(平成23年度及び平成24年度における未払賃金の有無)について 雇用契約における労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていると評価することのできる時間をいうと解されるところ、XとYとの間の雇用契約書(書証略)においては、「授業担当時間以外は拘束しないものとする。」と明記されており、実態としても、Yは、非常勤講師に対し、空き時間中に補講や自習監督等、突発的に教員が必要となる事態への対応を命ずることはなく、空き時間中の外出についても、許可を要するとの運用を行っていなかった(書証略、証人D及びX本人の供述結果によって認められる。)。上記実態からすると、本件学校において、非常勤講師が空き時間中にYの指揮命令下にあったと評価することはできない。 空き時間が労働時間であることを前提とする、Xによる当該空き時間分の賃金請求には、理由がない。 |