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ID番号 08985
事件名 不当労働行為救済命令一部取消請求事件
いわゆる事件名 国・中央労働委員会(JR西日本・動力車労働組合西日本岡山)事件/西日本旅客鉄道(動労西日本戒告処分等)事件
争点 不許可ビラ配布等に対する訓告、戒告、雇止め等の有効性が争われた事案(労組敗訴)
事案概要 (1) 第1事件補助参加人第2事件原告国鉄西日本動車労働組合は、第1事件原告兼第2事件参加人西日本旅客鉄道株式会社が、組合副執行委員長のAに対し、①会社施設内において、会社の許可を得ないまま、ビラを配布したとして訓告に付し、②出務遅延したことに対し戒告処分に付し、③その後、雇止めにしたこと、④社員採用選考試験受験の無効を通告したこと不当行為に当たるとして、岡山県労働委員会に対し救済を申し立て、更に、両者は、初審命令を不服として、中央労働委員会に対し再審査を申し立てた。本件は、中央労働委員会の命令を不服とする両者が、中央労働委員会の命令の違法性等を争ったもの。
(2) 東京地裁は、Aに対する処分は適法なものであると判断した。
参照法条 労働組合法7条
憲法28条
体系項目 懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用
解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2014年8月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成24年(行ウ)405号/平成24年(行ウ)533号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1104号26頁
労働委員会関係 命令・裁判例データベース
審級関係 控訴審 東京高裁/H27.3.25/平成26年(行コ)362号
評釈論文
判決理由 争点(1)(本件訓告の不当労働行為該当性)について
会社において、許可なく会社施設内でビラの配布等をしてはならず、組合活動を行ってはならない旨の就業規則の規定があることは前記認定のとおりであり、Aの上記各行為(本件ビラ配布)は、形式的にその文言をみる限り、これに違反するものであるということができる。
本件ビラ配布に関して、就業規則の規定に基づき処分することは許されるものというべきところ、前記認定事実によれば、Aは、本件ビラ配布以前においても、会社に許可を得ないまま、施設内のホワイトボードにビラを貼付して厳重注意を受けたり、その他、本件ビラ配布以外にも30回ほど会社に無許可で施設内におけるビラ配布を行っていたものであって、本件ビラ配布につき、Aを訓告としたからといって、その処分が会社の合理的裁量を逸脱する不当に重いものということはできない。
そうしてみると、本件訓告は相当なものと認められる。
会社は、他の労働組合の組合員によるものを含め、ビラ配布について処分を含めた厳格な対応をしていたものであり、上記のとおりAに対して本件訓告としたからといって、これが殊更組合に対する反組合的な動機や意図に基づくものとも認め難い。
以上によれば、本件訓告が、労組法7条1号の不当労働行為に該当するということはできない。
争点(2)(本件戒告の不当労働行為該当性)について
本件遅刻が、繰り返された遅刻及びこれに対する注意指導の後になされた、寝過ごしという同一の原因に基づくものであったことにも照らせば、従前なされた厳重注意より一段重い訓告を超えて戒告としたとしても、その処分が会社の合理的裁量を逸脱する不当に重いものということはできない(この点、組合は、訓告を超えて戒告としている点を不当であると主張するが、上記説示の点から採用できない。)。
そうしてみると、本件戒告には相応の合理性があったということができる。
Aが、当時、活発な組合活動を行っていたといえるにしても、会社が組合活動を嫌悪して本件戒告を行ったとまでは認め難い。
争点(3)(本件雇止めの不当労働行為該当性)について
Aと会社との期間の定めのある雇用契約が実質的に期限の定めがないのとならないのと同様の状態にあったとみることはできない。
Aの担当業務の内容(臨時的な業務ではない。)や更新手続がとられた回数を考慮しても、継続雇用に対する期待が合理的であるといえるかは疑問が残る。
本件雇止め以前に4回以上遅刻をした契約社員の契約更新をした事例はなかったものであって、事業の性格上、厳格な時間管理を求め、従前からも徹底指導を行ってきた会社が、かかる事象に基づき本件雇止めの判断をしたとしても、相応の理由があったといえる。
そうしてみると、会社がAを雇止めとしたからといって、本件雇止めが、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当でないと認められない場合に当たるということもできず、むしろ、本件雇止めには相応の合理性があったといえる。
本件雇止めには相応の合理性が認められる上、会社は、組合の求めに応じて団体交渉にも応じており、組合が指摘するような時間的近接性があったからといって、直ちに本件雇止めが報復的な処分とみることもできない。
争点(4)(本件通告の不当労働行為該当性)について
募集要項では、採用予定日の前日において契約社員として勤務する見込みであることが必要とされていたものであり、本件雇止め(その効力に関しては前記参照)に伴い、上記要項に定める採用条件を満たさなくなったものであるといえる。
そうしてみると、会社が、Aを同選考試験の対象から除外し、その旨を平成22年2月19日、本件雇止めの通知の際に説明したこと(本件通告)が不当なものとはいえず、組合主張のように、本件通告が労組法7条1号、3号、4号の不当労働行為に該当するということはできない。
よって、会社の本件請求は理由があるからこれを認容し、組合の本件請求はいずれも理由がないからこれらを棄却する。