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ID番号 08990
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 資生堂(アンフィニ)事件
争点 派遣労働者の雇止めに関し派遣先との労働契約が成立しているかが争われた事案(元労働者一部勝訴)
事案概要 (1) 原告(X)らは、被告Y1社と業務委託契約をしている被告Y2社との間で労働契約を締結し、Y1社の工場で派遣労働者又は請負労働者として勤務していたところ、解雇ないし雇止めをされたため、①Y1社に対し、規範的・合理的意思解釈又は黙示の合意により労働契約が締結したとして解雇及び雇止めが無効であると主張し、②Y2社に対しても同様の主張をして労働契約上の地位の確認を求めたもの。
(2) 東京地裁は、①については労働契約の成立を認めず、②については雇止めは無効であると判断した。
参照法条 労働契約法3条
労働契約法6条
労働契約法16条
労働契約法17条
民法1条
民法90条
民法95条
民法96
労働基準法6条
職業安定法44条
体系項目 労働契約(民事)/派遣
労働契約(民事)/成立
解雇(民事)/整理解雇
解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)
解雇(民事)/解雇権の濫用
裁判年月日 2014年7月10日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 平成22年(ワ)2867号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1103号23頁
審級関係 控訴
評釈論文 藤田温久・季刊労働者の権利307号57~62頁2014年10月
橋本陽子(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1483号112~115頁2015年8月
判決理由 争点(1)(XらとY1との間の労働契約の成否)について
XらとY2との労働契約が名目的、形式的なものではなく、採用、賃金支払及び労務管理のいずれをとっても実体を伴ったものであったこと、に照らせば、XらとY1との間において、黙示の労働契約が成立していたことを基礎付けるに足る事情があるということはできない。
XらとY2との間の労働契約の有効性については、無効と解すべき特段の事情があるとは認められない。
以上のとおり、XらとY1との間に労働契約が成立していたとは認められないから、同労働契約の存在を前提とするXらのY1に対する請求は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも理由がない。
争点(2)(Y2に対する請求)について
XらのY2との労働契約の契約期間は、本件期間短縮の合意により、平成21年4月1日から同年5月31日までの2か月間に短縮されたものであると認められる。
争点(2)イ(Y2の第1グループXらに対する本件解雇の有効性)について
労働契約法17条1項は、使用者は、期間の定めのある労働者について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない、と定めている。契約の当事者は契約の有効期間中はこれに拘束されるのが契約法上の原則であり、労働者においては、当該契約期間内の雇用継続に対する合理的期待は高いものといえることから、同条にいう「やむを得ない事由」とは、期間満了を待たずに直ちに契約を終了させざるを得ないような重大な事由をいうと解するのが相当である。
本件解雇については、人員削減の必要性は認められるものの、その程度は高度なものとまではいえず、Y2において解雇回避努力義務を尽くしたということはできず、手続の妥当性も欠いていたというべきである。これらの事情を総合すると、本件解雇につき、「やむを得ない事由」(労働契約法17条)があると認めることはできない。
したがって、本件解雇は、無効である。
争点(2)ウ(Y2の第2グループXらに対する本件雇止めの有効性)について
第2グループXらはY2との間の労働契約につき雇用継続についての合理的期待を有していたと解するのが相当である。
したがって、Y2による本件雇止めには、解雇権濫用法理が類推適用され、雇止めが客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、本件雇止めは許されない。
本件雇止めについては、人員削減の必要性は認められるものの、その程度は高度なものとまではいえず、かつ、Y2において人員削減回避の措置を十分に尽くしたということも、人選が合理的であったということもできず、手続の妥当性も欠いていたというべきであるから、本件雇止めは、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認めることはできない。 したがって、本件雇止めの効力を認めることはできない。