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ID番号 09014
事件名 割増賃金等請求控訴事件
いわゆる事件名 マーケティングインフォメーションコミュニティ事件
争点 定額の営業手当の意味と割増賃金の支払が争われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 会社Y(被告、被控訴人)との間で雇用契約を締結していたX(原告、控訴人)が、Yに対し、労基法37条1項に定める時間外労働に対する割増賃金等を請求し提訴したもの。
Yは、Yが支給していた本件営業手当は割増賃金の対価としての性格を有していると主張した。
(2) 東京地裁は、営業手当として支払われた額を控除したうえでYの請求を認容したが、東京高裁は営業手当を割増賃金の算定基礎賃金とし、Xの請求を一部認容した。
参照法条 労働基準法32条
労働基準法36条
労働基準法37条
体系項目 賃金(民事)/割増賃金/固定残業給
賃金(民事)/割増賃金/割増賃金の算定基礎・各種手当
労働契約(民事)/基準法違反の労働契約の効力
裁判年月日 2014年11月26日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(ネ)3329号
裁判結果 原判決一部変更、確定
出典 労働判例1110号46頁
審級関係 一審 横浜地裁/平成26年4月30日/平成25年(ワ)1758号
評釈論文
判決理由 労基法32条は、労働者の労働時間の制限を定め、同法36条は、36協定が締結されている場合に例外的にその協定に従って労働時間の延長等をすることができることを定め、36協定における労働時間の上限は、平成10年12月28日労働省告示第154号(36協定の延長限度時間に関する基準)において、月45時間と定められている。100時間という長時間の時間外労働を恒常的に行わせることが上記法令の趣旨に反するものであることは明らかであるから、法令の趣旨に反する恒常的な長時間労働を是認する趣旨で、X・Y間の労働契約において本件営業手当の支払が合意されたとの事実を認めることは困難である。したがって、本件営業手当の全額が割増賃金の対価としての性格を有するという解釈は、この点において既に採用し難い。
賃金体系の変更が行われた実質的な理由は本件全証拠によるも明らかでないが、変更前後の上記内訳、金額に照らすと、上記営業手当には、従前、基本給、住宅手当、配偶者手当、資格手当として支払われていた部分が含まれていたと推認することができる。
本件営業手当の支給が開始された月から平成25年2月までの間に、本件営業手当の性質に変化があったとは認め難い。
以上によれば、本件営業手当の全額が割増賃金の対価としての性格を有するという解釈は、本件賃金体系の変更があった前後における上記状況に照らしても採用することができない。
本件営業手当の全額が割増賃金の対価としての性格を有すると認めることはできないことは明らかであって、他にこれを認めるに足りる証拠はない。そして、本件営業手当は、割増賃金に相当する部分とそれ以外の部分についての区別が明確となっていないから、これを割増賃金の支払と認めることはできず、本件営業手当の支払により割増賃金の支払義務が消滅したとのYの主張は採用することができない。
したがって、本件営業手当は、基本給とともに、割増賃金算定の基礎賃金となる。