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ID番号 09016
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 ベルネット事件
争点 情報処理システム開発業務に従事する者の契約が労働契約であるか否かが争われた事案(原告敗訴)
事案概要 (1) 原告(X)が、被告(Y)に対し、XY間の契約は雇用契約であるにもかかわらず、Yが健康保険等の加入手続を怠り損害を被ったとして損害賠償を求め提訴したもの。
なお、Yは、XY間の契約は業務委託契約であり、本来健康保険等の加入手続をYが行う義務はないが、XY間で別途合意して労働保険(雇用保険、労災保険)についてのみYがXの加入手続を行ったと主張した。
(2) 東京地裁は、本件は業務委託契約であるとして請求を棄却した
参照法条 民法623条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/労働者/労働者の概念
裁判年月日 2014年9月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ワ)14095号/平成25年(ワ)27488号
裁判結果 棄却
出典 ウエストロー・ジャパン
審級関係
評釈論文
判決理由 争点1(本件契約の法的性質(業務委託契約か雇用契約か))
XY間で業務委託契約締結に関する協議がなされたことが認められる。
本件契約はいずれも業務委託契約書の形式で締結されていること、収入印紙の貼付がいずれの業務委託契約書にもされていること、支払についてはXの提出した請求書に基づいてYが支払っていたこと、本件契約には消費税の定めがあること、がそれぞれ認められる。
証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば,Yの社員であれば通常行われる賞与の支給、有休・代休の付与はないこと、給与計算に使うために社員がYに提出する勤務表もXは提出していないこと、YはXの時間管理をしていなかったこと、がそれぞれ認められる。
認定事実によれば、CからXに対する具体的な指揮命令がなかったことが認められる。その他、D社又はYからの具体的な指揮命令があったことを認めるに足りる証拠はない。なお、前記1(3)(略)の認定事実によれば、Xには顧客に対する報告業務があったことが認められるが、かかる事実のみではD社又はYからの具体的な指揮命令があったことを推認するに足りない。
以上(中略)を総合すると、本件契約は雇用契約ではなく業務委託契約であると認められる。また、Xが主張する「業務委託契約」が偽装された事実は認められない。
争点2(Yの債務不履行の有無)
本件契約は業務委託契約であるから、Xの主張はその前提を欠き、主張自体失当である。また、本件契約上Yの債務不履行があったことを認めるに足りる証拠はない。印紙代を業務委託料から控除することは本件契約の性質上当然発生する費用を控除したにすぎず、Yの債務不履行責任は発生しない。
Xの健康保険及び厚生年金資格の確認請求が認められているが、本件契約終了後の事情であり、当裁判所の判断を左右しない。
YがXに対し、あえて労働保険の加入手続をしたことについては、前記1(4)(略)の認定事実のとおりである。法的評価としては,XY間の契約上の特段の合意に基づく行為とみるべきところ、YはXY間の上記合意に基づきその通りの手続を行っているのであるからYに契約上の債務不履行責任は発生しない。
社会保険については、前記1(5)(略)の認定事実のとおり、XY間で契約上の合意は成立していないから、Yが加入手続を行わなかったとしてもYに契約上の債務不履行責任は発生しない。