ID番号 | : | 09018 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ワークスアプリケーションズ事件 |
争点 | : | 営業職の時間外割増賃金の支払と労働契約の終了が争われた事案(労働者一部勝訴) |
事案概要 | : | (1) (株) ワークスアプリケーションズ(Y)と労働契約を締結した労働者(X)が、休職期間満了により退職とされたことに対し、①休職前の期間の時間外割増賃金、②休職期間満了日までに就労が可能となり復職要件を満たしていたのに就労を拒絶されたため就労できなかったとしてその後の賃金の支払等を求め提訴したもの。 なお、Xは、上記の請求と合わせて、労働契約上の権利を有する地位の確認も求めていたところ、平成25年11月18日の本件の弁論準備手続期日において、Yがこれを認諾して終局した。 (2) 東京地裁は、時間外割増賃金支払と労働を拒絶された日以降の一定期間の賃金の支払を認めた。 |
参照法条 | : | 労働基準法13条 労働基準法24条 労働基準法32条 労働基準法37条 労働基準法38条の2 民法135条 民法536条 |
体系項目 | : | 労働時間(民事)/事業場外労働 賃金(民事)/割増賃金/割増賃金の算定基礎・各種手当 賃金(民事)/割増賃金/固定残業手当 就業規則(民事)/就業規則と法令との関係 退職/失職 休職/休職の終了・満了 |
裁判年月日 | : | 2014年8月20日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成25年(ワ)9787号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却、一部却下 |
出典 | : | 労働判例1111号84頁 |
審級関係 | : | 控訴 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 争点(1) Xは、就業規則46条「出張その他従業員が労働時間の全部又は一部について事業場外で勤務した場合で、当該労働時間を算定し難い場合」に当たり、賃金規程15条1項の適用があるか。 Xの業務については、事業場外で行われることがあったとはいえ、使用者が労働者の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認められない。 したがって、労基法38条の2の「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いとき」にも、就業規則46条「出張その他従業員が労働時間の全部又は一部について事業場外で勤務した場合で、当該労働時間を算定し難い場合」にも当たらないというべきである。 争点(2) 営業手当は、月50時間分の時間外手当であり、時間外労働手当に充当されるか。 営業手当は、労基法所定の計算方法によって算出した50時間分の時間外労働手当の額を下回る額となることが明らかであり、賃金規程で営業手当を月50時間分の時間外手当と定めた部分は、労基法に定めた基準を下回る労働条件であり(労基法13条)、営業手当の支払をもって時間外労働手当の一部支払であると認めることはできない。 争点(3) Xは、計算表の始業欄、終業欄及び労働時間欄のとおり就労したか。 勤務実績管理の入力内容は、ほぼ毎日「午前9時から午後7時まで」を労働時間とするものであり(証拠略)、別紙(略)当裁判所の判断/計算表で引用した各証拠に照らし、Xの勤務実態を反映しているとは到底認められない。したがって、勤務実績管理の入力内容をもって、Xの就労時間が日報メールの送信時刻より短かったと認めることはできない。 時間外労働手当の額 別紙認容額・未払時間外手当表(略)のとおりとなり、その合計額は102万9670円となり、同表の未払時間外労働手当額欄記載の各金員に対して遅延損害金起算日欄の各日から商事法定利率による遅延損害金が発生する。 付加金の額 付加金として前記(2)(時間外労働手当の額)と同額の支払を命じるのが相当である。そして、本判決確定の日の翌日から民法所定の遅延損害金が発生する。 本判決確定の日の翌日以降の賃金の支払を求める部分について 本判決確定の日の翌日以降の賃金の支払を求める部分は、賃金の支払を命じる判決が確定した後もYがこれを支払わないと認めるべき根拠はないことから、「あらかじめその請求する必要がある」(民事訴訟法135条)とはいえないから、これを却下する。 争点(4) 平成24年12月7日から平成25年9月23日までXが就労不能であったのは、Xが就業規則18条1項1号の復職事由を満たしていたのに、Yが本件退職扱いとしたことによるもので、Yの責に帰すべき事由によるか。 Xは、休職期間満了日である平成24年12月7日の時点において、元の職場(西日本営業部)において就労が可能な状態にあり、就労を申し出ていたといえるから、債務の本旨にしたがった履行の提供があり、復職要件を満たしていたと認めるのが相当である。 Xは休職期間満了日において復職要件を満たしていたといえるから、本件退職扱いは無効である。そして、本件退職扱いにより就労が不可能となっていた期間は、「債務者の責に帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったとき」(民法536条2項)に当たるから、Xは、休職期間満了日の翌日である平成24年12月8日から、少なくともYが9月17日付け通知により就労を開始するよう求めた平成25年9月24日の前日である同月23日までは、賃金請求権を失わない。 Xが本件訴訟において労働契約上の権利を有することの確認を求めていたのに対して、Yが9月17日付け復職通知等により、平成25年9月24日をもってこれを受け入れる旨意思表示をしたのであるから、当事者間では、同月24日以降、本件退職扱いを解消し労働契約を存続させる合意が成立したといえる。また、同年11月18日の本件認諾によって、XがYに対し労働契約上の権利を有することも確定している。 |