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ID番号 09025
事件名 地位確認等控訴事件
いわゆる事件名 日本郵政(苫小牧支店・時給制契約社員B雇止め)事件
争点 契約更新を繰り返してきた契約社員に対する雇止めの有効性が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) 郵便事業株式会社に期間雇用社員として雇用され、雇用期間を概ね6か月として契約更新を繰り返してきたX(原告、被控訴人)が、雇用期間満了をもってされた雇止めは権利濫用であって許されないとして、地位確認等を求め提訴したもの。
(2) 札幌地裁は、本件雇止めは権利の濫用であるとしたため、吸収合併により郵便事業株式会社の事業及び本件訴訟の被告たる地位を承継した日本郵便(Y)が控訴したところ、札幌高裁は一審判決を覆し雇止めは有効であるとした。
参照法条 労働契約法16条
労働契約法19条
体系項目 解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否(雇止め)
解雇(民事)/解雇権の濫用
裁判年月日 2014年3月13日
裁判所名 札幌高
裁判形式 判決
事件番号 平成25年(ネ)316号
裁判結果 認容(原判決取消し)
出典 労働判例1093号5頁
審級関係 一審 札幌地裁/H25.7.30/平成25年(ワ)3390号
上告、上告受理申立
評釈論文 篠原信貴・日本労働法学会誌125号156~166頁2015年5月
小西康之(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1484号135~138頁2015年9月
判決理由 争点2(解雇に関する法理が類推適用される場合、本件雇止めは許されるか。)について
Yにおいては、平成23年度の時点で、数年以内に債務超過に陥ることが予測され、それを回避すべく経営を改善するためには、人件費削減の必要性があり、苫小牧支店においても、郵便課通常係の時給制契約社員の基本給与の削減に関し、週110時間の削減を要し、その削減目標を達成するためには、労働時間短縮に対する上記社員の意向によっては人員削減(雇止め)の必要性があったことが認められる。
Yは、本件雇止め以前に、雇止め回避のための努力を尽くしていたものと認められる。
Yが、人件費削減のために、まず初めに希望退職者を募集し、それに対する応募がなかったことから、次の手段として労働時間の短縮による調整を図ったことは、最終手段である雇止めを回避するためであったというべきであるから、事前に労働時間の短縮に応じれば雇止めの対象から除外されるということが告知されていたか否かにかかわらず、雇止めを回避するために労働時間の短縮に応じた者を優先的に雇止めの対象から除外したことが不合理であるということはできない。
諸手続を踏んだ上でされた本件雇止めに、手続上特段不相当な点は認められない。
本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でないとはいえないから、許されるものであって、本件最終雇用契約は、平成23年9月30日をもって終了したというべきである。