ID番号 | : | 09026 |
事件名 | : | 未払賃金請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | シオン学園(三共自動車学校・賃金体系等変更)事件 |
争点 | : | 教習指導員に対する賃金体系等変更の効力が争われた事案(労働者敗訴) |
事案概要 | : | (1)Y(被告、被控訴人)が経営する自動車学校に教習指導員として勤務していたXら(原告、控訴人)が、基本給を減給し、勤続給・技術給等を廃止する等した変更は、労働条件の不利益変更であり、労働契約法に違反する等として、Yに対し、変更前の給与の支払いを受ける地位を有することの確認及び差額の支払い等を求め提訴したもの。 (2) 横浜地裁は、請求額の一部を認容し、その余を棄却したため、Xらは各敗訴部分につきこれを不服として控訴したところ、東京高裁は原審の判決を維持した。 |
参照法条 | : | 労働契約法3条 労働契約法8条 労働契約法9条 労働契約法10条 労働組合法7条 民法90条 民事訴訟法134条 |
体系項目 | : | 就業規則(民事)/就業規則の周知 就業規則(民事)/就業規則の一方的不利益変更/賃金・賞与 |
裁判年月日 | : | 2014年2月26日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成25年(ネ)4608号 |
裁判結果 | : | 控訴棄却、確定 |
出典 | : | 労働判例1098号46頁 |
審級関係 | : | 一審 横浜地裁/H25.6.20/平成22年(ワ)833号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 当裁判所も、本件確認の訴えは不適法であり、Xらのその余の請求は、各Xが原判決別紙2「Xら未払賃金請求額及び認容額一覧表」(略)の各Xに係る「合計認容額」欄記載の各金員及びうち同表の各Xに係る「各月認容額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年6分の割合による金員の各支払を、控訴人X14、控訴人X15及び控訴人X16が原判決別紙3「Xら退職金請求額及び認容額一覧表」(略)の各Xに係る「認容額」欄記載の各金員及びこれらに対する「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年6分の割合による金員の各支払を求める限度で理由があるが、その余はいずれも理由がないものと判断する。 Yは、本件組合及び本件教習所親睦会に対して、本件第一次変更と同一内容の賃金体系の変更をする旨通知した上で本件新給与規程を定めていることからすると、本件新給与規程に記載しないことにより、年齢給、勤続給、技術給及び調整給を支給しない旨を明示したものと解することができる。 本件第二次変更により、(中略)本件新給与規程は、その内容自体が不相当なものとはいえない。 本件第二次変更後の控訴人X11を除くXらの1か月の賃金支給額は、概ね30万円台後半から40万円台で推移しており(原判決別紙4「差額賃金計算表」の《改定後賃金》「s 総支給額」欄)(略)、直ちに生活に困窮するような水準とはいえず、本件第二次変更から3年以上経過しているが、Xらが、本件第二次変更による減額が原因で現実に生活に困窮を来すことになったことを認めるに足りる証拠もない。 そうすると、X11を除くXらについては、本件第二次変更による不利益の程度は小さくないものの、基本給の減額が退職金の支給額に影響することを考慮しても、なお、これを受忍させることが法的に許容できないほど重大なものとまではいえない。 Yにおいては売上高に対する人件費の割合が高く、常に7割を超える状況であったことからして、人件費を削減する必要性があったと認められる。 本件第二次変更の実施に当たり代償措置や経過規定が設けられていないからといって、直ちに変更後の本件新給与規程が内容の相当性を欠くということはできない。また、相当性の判断の一要素として、YにおいてXらと同じく教習指導員を務める従業員(B社員及び契約社員)の賃金水準や、同一地域で業種が同じ会社の賃金水準と比較することが不相当とはいえない。 本件組合が変更後の本件新給与規程に合意していないとしても、何の交渉もしていないからその合理性がないとはいえない。 Yの従業員代表が、本件新給与規程を労働基準監督署に届け出るに当たり、特に意見はないと述べていること、Xらと同様に本件第二次変更により不利益を受けるC社員2名から特段の異議が出されていないことを考慮することも、不相当とはいえない。 Yは、本件第二次変更の実施前に、本件組合及び本件教習所親睦会に対し、給与規程を改定すること及び当該改定の内容を通知するとともに、本件新給与規程を定めた平成22年7月1日に、その内容を社内に掲示している(証拠略)ことからすると、これによって労働者に周知させたと認めることができる。そして、本件新給与規程は、既に本件第一次変更により実施されていた事項を明文化したもので、前記(4)(略)の経緯に照らして、Xらもその内容を十分に認識していたと認められることからすると、実質的な周知がなかったとはいえない。 |