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ID番号 09029
事件名 地位確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 西日本鉄道(B自動車営業所)事件
争点 職種限定合意のあった運転士に対するその他職種への職種変更の適法性が争われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) 自動車運転士兼車掌(原告、控訴人X)が、西日本鉄道(被告、被控訴人Y)との間で、職種をバス運転士とする職種限定合意を含む労働契約を締結していたが、バス運転士以外の職種としての勤務を命ずる辞令が発せられ、その後、退職したため、Yによるバス運転士以外の職種への職種変更は無効であると主張して、(1)労働契約に基づき、Yに対し、職種変更に伴う賃金差額、退職金差額を、(2)Yの従業員から退職を強要されたと主張して、Yに対し、使用者責任に基づき、慰謝料の支払を求め提訴したもの。
(2) 福岡地裁はXの請求をいずれも棄却したため、Xが控訴したが、福岡高裁は原判決相当とし控訴を棄却。
参照法条 民法709条
体系項目 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/担務変更・勤務形態の変更
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2015年1月15日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 平成26年(ネ)583号
裁判結果 控訴棄却
出典 労働判例1115号23頁
審級関係 平成26年5月30日/福岡地方裁判所/第5民事部/判決/平成25年(ワ)1556号
上告、上告受理申立
評釈論文 大内伸哉・ジュリスト1488号4~5頁2016年1月
山本志郎・労働法学研究会報67巻6号26~31頁2016年3月15日
古賀修平・日本労働法学会誌127号134~142頁2016年5月
上田絵理・法律時報88巻8号124~127頁2016年7月
根本到・法学セミナー61巻8号123頁2016年8月
判決理由 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/担務変更・勤務形態の変更〕
 労働契約が職種限定合意を含むものである場合であっても、労働者の同意がある場合には、職種変更をすることは可能であると解される。しかしながら、一般に職種は労働者の重大な関心事であり、また、職種変更が通常、給与等、他の契約条件の変更をも伴うものであることに照らすと、労働者の職種変更に係る同意は、労働者の任意(自由意思)によるものであることを要し、任意性の有無を判断するに当たっては、職種変更に至る事情及びその後の経緯、すなわち、(ア)労働者が自発的に職種変更を申し出たのか、それとも使用者の働き掛けにより不本意ながら同意したのか、また、(イ)後者の場合には、労働者が当該職種に留まることが客観的に困難な状況であったのかなど、当該労働者が職種変更に同意する合理性の有無、さらに、(ウ)職種変更後の状況等を総合考慮して慎重に判断すべきものであると解される。
 本件職種変更はXの任意の同意による有効なものであり、その余の点について判断するまでもなく、賃金差額及び退職金差額の各支払を求めるXの請求はいずれも理由がない。
〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 前記(1)及び(2)によれば、その余の点について判断するまでもなく、使用者責任による損害賠償を求めるXの請求も理由がない。