ID番号 | : | 09030 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 大阪市ほか(労使関係アンケート調査)事件 |
争点 | : | 団結権を侵害する労使関係アンケート調査を実施した市等の違法性が問われた事案(労働者勝訴) |
事案概要 | : | (1) Xら(原告)は、Y1(被告、大阪市)の公務員である市長・総務局長等が、本件アンケートに回答することを命じる本件職務命令を発出し、本件アンケートの実施に関する本件決裁等をしたこと、Y2(被告)が本件アンケートを作成したことについて、本件アンケートがXらの憲法又は労組法上の権利を侵害するものであり、国家賠償法上の違法性があると主張して、Y1およびY2に対して損害賠償を求め提訴したもの。 (2) 大阪地裁は、本件アンケートはXらの団結権を侵害するものであるとして、Y1およびY2の損害賠償責任を認め、Xらの請求を一部認容した。 |
参照法条 | : | 日本国憲法13条 日本国憲法19条 日本国憲法21条 日本国憲法28条 民法709条 民法710条 民法719条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/思想・信条の調査、調査協力義務 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 2015年1月21日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成24年(ワ)4348号/平成24年(ワ)12059号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 判例時報2299号71頁/労働判例1116号29頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 在間秀和・季刊労働者の権利309号95~98頁2015年4月 麻生多聞・法学セミナー60巻6号116頁2015年6月 坂田隆介・速報判例解説〔17〕(法学セミナー増刊)27~30頁2015年10月 |
判決理由 | : | (1)(Y1の国家賠償責任の有無) 本件アンケートについては、個別の設問のうち、Q七及びQ九がXらのプライバシーを侵害し、Q六、Q一六及びQ二一がXらの団結権を侵害するものと認められるから、本件アンケートが実施されたことにより、Xらはプライバシーを侵害され、Xらは団結権を侵害されたものというべきである。 市長等について見るに、市長等は、任命権を有する各職員に対し、本件アンケートに回答することを義務付ける本件職務命令を発出するに当たり、本件アンケートに回答させることが職員又は労働組合の権利を違法に侵害するものではないことを確認し、必要に応じてその内容を修正・変更するための措置を採ったり、本件職務命令を発出することを中止したりすべき職務上の注意義務を負っていたものというべきである。 しかしながら、前提事実(4)≪略≫のとおり、市長等は、本件アンケートの内容を確認することが可能であったにもかかわらず、その内容を確認することすらせず、漫然と本件職務命令を発出し、Y1の職員に対し、本件アンケートに回答することを義務付けて、Xらの憲法上の権利を侵害したものであるから、上記の注意義務を怠ったものというべきである。 また、総務局長等について見るに、総務局長等は、本件アンケートの実施のための本件決裁をしたり、各所属長に対して本件アンケートの実施を依頼したりするに当たり、本件アンケートを実施することが職員又は労働組合の権利を違法に侵害するものではないことを確認し、必要に応じてその内容を修正・変更するための措置を採ったり、本件アンケートの実施を中止したりすべき職務上の注意義務を負っていたものというべきである。 しかしながら、前提事実(4)≪略≫のとおり、総務局長等は、本件アンケートの内容を承知していたにもかかわらず、漫然と本件決裁等をし、本件アンケートの実施に至らせ、Xらの憲法上の権利を侵害したものであるから、上記の注意義務を怠ったものというべきである。 したがって、市長・総務局長等による本件職務命令及び本件決裁等は、国家賠償法上の違法性を有するものというべきである。 Y1は、国家賠償法一条一項に基づき、本件アンケートの実施によってXらが被った損害を賠償すべき責任を負うというべきである。 (2)Y2の損害賠償責任の有無について 本件アンケートはXらの憲法上の権利を侵害する設問を含むものであったところ、前提事実(4)≪略≫によれば、Y2は、本件アンケートを作成するとともに、市長等に本件職務命令を発出するよう依頼することによって、Xらに本件アンケートに回答させたものであるから、Y2の上記行為は、不法行為法上の違法性を有するというべきである。 Y2は、本件アンケートの作成等というY2の行為は、Y1による本件アンケートの実施という公権力の行使の一部であるから、Y2が個人責任を問われることはないと主張する。 しかしながら、前提事実(4)≪略≫のとおり、Y2は、Y1の特別顧問として、職員としての身分を有しておらず、Y1との間の委任関係に基づき、私人としての立場で、本件アンケートの作成等をしたものであるところ、このような行為は、国家賠償法一条一項に規定する「公権力の行使」に該当するものとはいえないから、Y2の上記主張は採用することはできない。 Y2は、民法709条に基づき、本件アンケートの実施によりXらが被った損害を賠償すべき責任を負うというべきである。 また、市長・総務局長等の上記違法行為及びY1の上記不法行為は、客観的関連共同性を有するものということができるから、民法719条1項前段に基づき、Y1とY2は、連帯してXらに生じた損害を賠償すべき責任を負うというべきである。 |