ID番号 | : | 09039 |
事件名 | : | 損害賠償、地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | クレディ・スイス証券事件 |
争点 | : | 業績連動給の請求権の有無が問われた事案(労働者敗訴) |
事案概要 | : | (1) 金融商品取引業者の登録を受けている法人であるY(クレディ・スイス、被告、被控訴人、上告人)に雇用されていたXが、Yから退職勧奨及び自宅待機命令を受けた後に解雇されたことから、Yに対し、〈1〉上記解雇が違法、無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めるとともに、〈2〉Yが違法な退職勧奨等をしてXに業績連動型の報酬であるインセンティブ・パフォーマンス・コンペンセイション・アワード(以下「IPC報酬」という。)を支給しなかったことが不法行為又は債務不履行を構成すると主張して、平成二〇年度及び同二一年度分のIPC報酬相当額等の損害賠償を求め、また、〈3〉上記〈2〉のIPC報酬相当額の損害賠償請求と選択的に、労働契約に基づく賃金として上記各年度分のIPC報酬の支払を求め提訴したもの。(〈3〉の請求のうち平成二〇年度分に係るものは、原審において追加) (2) 東京地裁はXの請求を棄却したためXが控訴したところ、東京高裁は一部Xの請求を認めたため、Yが上告したところ、最高裁はXに賞与請求権は発生していないとしてXの請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 民法415条 |
体系項目 | : | 賃金(民事)/賞与・ボーナス・一時金/賞与請求権 |
裁判年月日 | : | 2015年3月5日 |
裁判所名 | : | 最高裁第一小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成25年(受)第1344号 |
裁判結果 | : | 破棄自判 |
出典 | : | 判例時報2265号120頁/判例タイムズ1416号64頁 |
審級関係 | : | 控訴審 平成25年1月31日/東京高等裁判所/判決/平成23年(ネ)2830号 一審 平成23年3月18日/東京地方裁判所/民事第36部/判決/平成21年(ワ)27520号 確定 |
評釈論文 | : | 判例紹介プロジェクト・NBL1064号69~71頁2015年12月15日 河津博史・銀行法務2159巻14号67頁2015年12月 盛誠吾・判例評論687号(判例時報2286)166~170頁2016年5月1日 木村一成・経営法曹189号44~50頁2016年7月 |
判決理由 | : | 〔賃金(民事)-賞与・ボーナス・一時金-賞与請求権〕 本件労働契約において、IPC報酬については、固定額が毎月支給される基本給とは別に、年単位で、会社及び従業員個人の業績等の諸要素を勘案してYの裁量により支給の有無及びその金額が決定されるものと解されるから、その具体的な請求権は、Xが当該契約においてその支給を受け得る資格を有していることから直ちに発生するものではなく、当該年度分の支給の実施及び具体的な支給額又は算定方法についての使用者の決定又は労使間の合意若しくは労使慣行があって初めて発生するものというべきである(最高裁平成一七年(受)第二〇四四号同一九年一二月一八日第三小法廷判決・裁判集民事二二六号五三九頁参照)。しかるところ、YにおいてXにつき平成二〇年度分のIPC報酬の支給の実施及び具体的な支給額又はその算定方法に係る決定はされておらず、また、これについての労使間の合意や労使慣行が存在したともうかがわれない。 以上に鑑みると、Xの平成二〇年度分のIPC報酬については、その支給を求め得る具体的な請求権が発生しているとはいえないから、XはYに対しこれを賃金の一部として請求することはできないというべきである。 |