ID番号 | : | 09052 |
事件名 | : | 休職命令無効確認等請求事件(25127号)、地位確認請求事件(31657号)事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本ヒューレット・パッカード事件 |
争点 | : | 休職期間満了による労働契約終了となった精神的不調である社員に対する休職命令の有効性等が問題となった事案(労働者敗訴) |
事案概要 | : | (1) 被告Yが従業員の原告Xを諭旨退職処分にしたが、当該諭旨退職処分が無効であることが平成24年4月27日の最高裁判所の判決により確定したため、Xが復職を求めたところ、Yが、Xの心身の不調を理由にXの就労申出を拒絶し、Xに対し、平成25年1月11日付けで休職を命じ、さらに、平成26年11月14日、休職期間が満了することとなる同月30日付けでXの退職の手続をとる旨通知したことから、Xが、Yに対し、〈1〉本件休職命令の無効確認、〈2〉労働契約上の地位確認、〈3〉Yの就労を拒絶している期間中の賃金及び賞与並びに遅延損害金の各支払、〈4〉平成27年2月分以降の賃金及び遅延損害金の支払(請求の趣旨4)、〈5〉平成27年6月以降の賞与及び遅延損害金の支払(請求の趣旨5)、〈6〉本件休職命令に係る不法行為に基づく慰謝料及び遅延損害金の支払を求め提訴したもの。 (2) 東京地裁は、Xが復職可能な状態にあったとはいえないとして、本件休職命令の休職期間が満了したことにより、本件就業規則第37条第6号に基づき、Xは自然退職し、本件労働契約は終了したことになり、Xの請求をいずれも棄却した。 |
参照法条 | : | 民法415条 民法709条 民事訴訟法134条 |
体系項目 | : | 退職/失職/失職 休職/休職期間中の賃金(休職と賃金)/休職期間中の賃金(休職と賃金) 休職/休職の終了・満了/休職の終了・満了 休職/傷病休職/傷病休職 賃金/賃金請求権の発生/休職処分・自宅待機と賃金請求権 賃金(民事)/賃金請求権の発生/就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権 |
裁判年月日 | : | 2015年5月28日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成25年(ワ)25127号/平成26年(ワ)31657号 |
裁判結果 | : | 一部却下、一部棄却 |
出典 | : | 労働経済判例速報2254号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 中山達夫・労働法令通信2406号18~21頁2016年1月8日 安藤啓一郎・LIBRA16巻5号44~45頁2016年5月 森美穂・経営法曹189号92~101頁2016年7月 |
判決理由 | : | 〔退職/失職/失職〕 〔休職/休職期間中の賃金(休職と賃金)/休職期間中の賃金(休職と賃金)〕 〔休職/休職の終了・満了/休職の終了・満了〕 〔休職/傷病休職/傷病休職〕 〔賃金/賃金請求権の発生/休職処分・自宅待機と賃金請求権〕 〔賃金(民事)/賃金請求権の発生/就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権〕 Xについては、その精神的な不調の存在故に、本件休職命令の時点において、本件労働契約上、その職種等に限定がないことを考慮しても、Y社内における配置転換により労働契約上の債務の本旨に従った履行の提供をすることができるような職場を見いだすことは困難な状況にあったというべきである。そうすると、本件休職命令は、本件就業規則第23条第1項第6号の要件(「本件就業規則第100条第6項の健康診断の結果、または客観的な状況から社員の業務外の傷病等の理由により休職が必要であると認められ、会社が休職を命じたとき」)を満たす有効なものである。また、YがXに対し、本件休職命令によりXに対し療養に専念することを命じたことは、Xの債務の履行の受領拒絶には該当しないし、Xが、その精神的不調の存在により、労働契約の債務の本旨に従った履行をすることができない状況にあると認められる以上、Yの責に帰すべき事由によりXの債務の履行が不能になったものと認めることもできない。 ク さらに、本件休職命令の発令後、その休職期間の満了日である平成26年11月30日までの間、Xが復職することができるような状態になっていたかどうかについても検討すると、この点に関するD診断書及びD医師の証言は、上記のとおり、にわかに採用することはできない。また、一般に、妄想性障害は、抗精神病薬を中心とする薬物治療により治療可能とされているが、Xが、本件休職命令後、休職期間が満了するまでの間、精神科医による適切な治療を受けていたことを認めるに足りる証拠はない。そうすると、Xが本件諭旨退職処分を受けた後の平成21年7月から平成22年6月までの約1年間、株式会社Aにおいて稼働していた事実や、X本人尋問の結果を考慮しても、本件休職命令の原因となったXの妄想性障害がなくなったことが確認され、Xが復職可能な状態になったことを認めるに足りない。 したがって、本件休職命令の休職期間が満了したことにより、本件就業規則第37条第6号に基づき、Xは自然退職し、本件労働契約は終了したことになる。 3 以上によれば、Xの請求のうち、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める請求(請求の趣旨2)、YがXの就労を拒絶している期間中労働契約に基づきYがXに対し支払うべき賃金(平成25年2月分から平成27年1月分まで)及び賞与(平成25年6月から平成26年12月まで)並びに遅延損害金の各支払を求める請求(請求の趣旨3)、平成27年2月分以降の賃金及び遅延損害金の支払を求める請求(請求の趣旨4)及び同年6月以降の賞与及び遅延損害金の支払を求める請求(請求の趣旨5)は、いずれも、その余の点について判断するまでもなく理由がない。 |