ID番号 | : | 09055 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | サカキ運輸ほか(法人格濫用)事件 |
争点 | : | 労働組合壊滅を目的とする会社分割に伴う社員の解雇の有効性が問われた事案(労働者勝訴) |
事案概要 | : | (1) 光洋商事株式会社(以下「光洋商事」という。)の従業員として同社と労働契約を締結した原告Xらが、同社の代表取締役である被告Y1は、Xらの労働組合を壊滅させる目的で、Xらを解雇し、光洋商事の資産、Xらを除く従業員、取引先等を、自らが支配する被告Y2(サカキ運輸株式会社)に承継させたが、Y2は光洋商事とXらとの労働契約を承継した(会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律〈以下「労働契約承継法」という。〉4条類推適用)又は法人格が否認されるとして、〈1〉Y2対して、光洋商事とXらとの間の労働契約に基づき、XらがY2との間で労働契約上の権利を有する地位にあることの確認(請求1項)、未払賃金並びに遅延損害金の各支払(請求2項)、(請求3項)を求め、さらに、〈2〉Y1に対して、不法行為に基づき、損害金各110万円及びこれに対する遅延損害金の各支払(請求4項)を求め提訴したもの。 (2) 長崎地裁は、本件雇止めは客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないとはいえないとし雇止めは有効であるとしたため、Xが控訴したところ、札幌高裁も雇止めは有効であるとした。 |
参照法条 | : | 民法709条 民法710条 会社法3条 会社法21条 |
体系項目 | : | 解雇/解雇事由/営業譲渡に伴う解雇 賃金/賃金請求の発生/無効な解雇と賃金請求権 労働契約/労働契約上の権利義務/使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 2015年6月16日 |
裁判所名 | : | 長崎地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成25年(ワ)445号 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例1121号20頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 水町勇一郎・ジュリスト1486号4~5頁2015年11月 中川拓・季刊労働者の権利312号142~146頁2015年10月 |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-営業譲渡に伴う解雇〕 Y1は、光洋商事からXら組合員を排除する目的をもって、光洋商事の長崎での運送事業を廃止し、Xらとの雇用関係を除いた有機的一体として同事業を支配下にあるY2に無償で承継させ、Xらを光洋商事ないしその支配下にあるY2から排除し、実質的に組合員であるXらのみを解雇したものである。 これは法人格を濫用した不当労働行為というべきで、光洋商事による本件解雇は労働組合法7条により無効であり、かつ、光洋商事の支配下にあるY2は、信義誠実の原則に照らし、光洋商事と別個独立した法人であるとして、光洋商事とXらの労働契約の効力が及ばないと主張することはできないというべきである。 したがって、Xらは、光洋商事との間の労働契約に基づき、Y2との間で労働契約上の権利を有する地位にあるというべきである。 〔賃金―賃金請求の発生―無効な解雇と賃金請求権〕 光洋商事によるXらの解雇は、不当労働行為により無効であり、Y2は、光洋商事と別法人であるとして、光洋商事とXらの労働契約の効力が及ばないと主張することはできないから、Y2は、平成25年10月分の給与から本件判決確定まで、毎月10日限り、退職前3か月の平均賃金であるX1 20万2625円、X2 19万9239円、X3 19万1015円、X4 18万2296円を支払うべきところ、そのうち、退職金相当額(X1 145万1048円〈平均賃金7か月分+3万2673円〉、X2 115万4500円〈平均賃金5か月分+15万8305円〉、X3 115万4500円〈平均賃金6か月分+8410円〉、X4 92万2500円〈平均賃金5か月分+1万1020円〉)は支払済みであるから、Xの未払賃金額からこれを控除すべきである。 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 光洋商事の代表者であるY2が行った本件解雇は違法であり、その態様や、Xらの生活上の不安、他方、Xらが本判決により、未払の給与の支払が受けられることになることなどを勘案すると、上記違法行為によりXらの受けた精神的苦痛を慰謝する金額としては30万円が相当である。そして、これについての弁護士費用は3万円が相当である。 |