ID番号 | : | 09075 |
事件名 | : | 懲戒処分無効確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 学校法人天使学園(大学教授)事件 |
争点 | : | 大学の入試委員長への懲戒処分の有効性が問われた事案(労働者敗訴) |
事案概要 | : | (1) 学校法人である控訴人Y(被告)が設置する大学の二〇一一年度(平成二三年度)の学部の一般入学試験等の入試委員会の委員長であった被控訴人X(原告)が、上記試験においていわゆる入試ミスがあったこと等を懲戒事由として、Yから減給一割一月の懲戒処分(以下「本件処分」という。)を受けたことについて、Yに対し、本件処分の無効確認、及び本件処分による減給分の支払等を求め提訴したもの。 (2) 札幌地裁は、懲戒事由のうち、二〇一一年(平成二三年)一般入試の入試問題のミス(処分事由〈1〉)は認められるが、ウエブ上での合格発表の遅延(三五~三八分、処分事由〈2〉)と、処分事由〈1〉のミスが外部から指摘されてから迅速な報告を怠ったこと(処分事由〈3〉)は認められず、処分事由〈1〉についても、ミスをした問題作成者が戒告にとどまっているのに、Xが減給処分にされるのは均衡を失するなどと判断し、Xの請求を全部認容したためYが控訴したところ、札幌高裁は原判決を取消し、Xの請求を棄却した。 |
参照法条 | : | 労働契約法15条 労働基準法91条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇/懲戒権の濫用/懲戒権の濫用 懲戒・懲戒解雇/懲戒事由/職務懈怠・欠勤 |
裁判年月日 | : | 2015年10月2日 |
裁判所名 | : | 札幌高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成27年(ネ)22号 |
裁判結果 | : | 原判決取消 |
出典 | : | 判例時報2286号127頁 労働判例1132号35頁 労働経済判例速報2262号16頁 |
審級関係 | : | 一審平成26年12月12日/札幌地方裁判所/民事第3部/判決/平成25年(ワ)1180号 確定 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇‐懲戒権の濫用‐懲戒権の濫用〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-職務懈怠・欠勤〕 Xには、本件ミスに関して、四号事由に該当する各職務懈怠が認められ、その内容は、(1)入試委員会の総括責任者の立場にあり、本件文科省通知で留意事項として示されていた入学試験開始後における試験問題の点検を、本件ガイドラインなどに定めてこれを実施することが容易であったのにこれを怠ったことと、(2)数学出題者が作成したチェック表を確認し、チェックがなかった項目について、数学出題者と第三者点検者に確認して注意喚起するなどの、初歩的かつ重要であり(そうしなければチェック表を利用する意味がない。)、容易に実施できる(他の職員に命じて行わせることを含む)ことを怠ったことであり、また、Xが、これらの職務を怠らなければ、本件ミスを防止し、又はこれを早期に発見することができ、追加合格者を出すことにはならなかった可能性が高いといえる。そうすると、本件ミスそのものの責任は主にZ3とZ4にあるとしても、Xの地位や職務懈怠の内容に照らせば、その責任は同人らよりも軽いとはいえない。したがって、処分事由〈2〉〈3〉は認められず、五号事由に該当するとは認められないことを考慮しても、減給一割一か月の懲戒処分(本件処分)は、Yの裁量を逸脱したものとは認められず、また、X以外に懲戒処分を受けた者が戒告であることとの均衡に照らしても、Xに対する処分が重すぎるとはいえない。 したがって、本件処分は有効であると認められる。 |